その彼と知り合ったのはとあるマッチングサイトだった。
彼からのアプローチがきっかけだった。
メッセージのやりとりもスムーズに進み、すぐに食事に行く仲になった。
初めて会う彼は全くピンとこなかった。
正直、タイプではない。友達で良いな。と思っていた。
だが、程なくして彼の猛アプローチに負け、付き合うことになった。
全て順調に...…と言うわけにいかず、付き合った初日に関係を壊すようなハプニングが起きた。
元々、猛アプローチに負けて付き合っただけ。別れを告げるのに躊躇はなかった。
彼に「別れたい」とだけ告げ、別れを了承してもらうために最後に友達として飲みに行くことになった。

1日で振られた彼が取った選択は、私のすさんだ心を揺るがせた

そして当日、大衆居酒屋で楽しく飲み、酔い覚ましに隣の駅まで歩くことになった。
もう少しで隣駅だ、というところで彼が急に決心したように「ねえ」と言ってきた。
「やっぱり好き。もう一度僕と付き合ってくれない?」
真剣な表情で私のことを真っ直ぐに見ながら言ってきたのだ。
「結婚したいと思えるような子に初めて会えたし、ずっと一緒にいたいと思ってる。もし僕が気持ちを伝えても何も変わらないなら、諦めるよ」
そして彼は、彼が今どんな気持ちなのかこれからどうしていきたいのか、私に対する気持ちを真っ直ぐに伝えてくれた。

今までネットで恋愛アドバイスを読み漁ってきた私からしたら、「復縁をしたいなら気持ちを伝えるのはダメ」「余裕を見せることが大事」とか「男に好き好き言うと飽きられる」なんて見てきたものだから、心が気持ちを言いたい、連絡をしたいとどれほど叫んでもその欲求に蓋をしてきた。

自分の心に蓋をしてでもネットのセオリーを信じて相手との関係を修復するのに必死だったのだ。
たとえセオリー通りに余裕があるふりをしたせいで相手が遠ざかり、気持ちを伝えれば良かったのかもしれないと後悔をしようとも。単に怖かったのだ、自分の気持ちを伝えたせいで相手に「しつこい」とか「重い」と思われ拒絶されることが。

でもどうだろう、私に真っ直ぐ真剣に気持ちを伝えてくる彼は「しつこい男」とか、「未練がましい男」には見えない。むしろ、拒絶される可能性だって十分あるのに自分の気持ちを真っ直ぐ相手に伝えているその姿がとても強く、綺麗だった。彼が紡ぐ言葉が口先だけだとしても、騙されていたとしても良いと思えるくらい彼は綺麗だった。
その姿を見て気がついた、確かに相手に自分の気持ちを言えば嫌われる可能性だってある。
でも、相手の気持ちを動かすこともできる。そして、何より自分の気持ちを相手に伝えることは人間として弱いのではなく、強いことなのだと。
彼が私の臆病な歪んだ恋愛観から救い出してくれたようだった。

真っ直ぐな彼と歪んでいた私があの時作った絆を信じている

その彼とはいまだに交流は続いている。
彼の自分の気持ちに真っ直ぐなところは良くも悪くも相変わらずだ。

あの時のデートのおかげで私達は何かの絆ができたと思っている。
私とあなたの縁が切れる時、最後にあなたに騙されていたと分かったとしても私はあの時のあなたを信じたことを後悔しません。
それくらいあの時のあなたは誰よりも素敵でした。