私のロールモデルは、人気海外ドラマ「SEX AND THE CITY」に登場する、4人の女性達である。

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この作品は、1998~2004年に放送されていたドラマ。ニューヨークを舞台に、キャラクターの異なる4人の30代女性の様々な生き方を描き、人気を博した。
ちなみにこうして私がエッセイを書いているのは、この物語の主人公である、ライターのキャリーの真似事である。

私が初めてこのドラマを見たのは20代前半、社会人になりたての頃だった。
様々なタイプの男性と出会っては別れを繰り返していく彼女達を見て、ニューヨーカーのぶっ飛びっぷりは爽快ではあったものの、「ニューヨークではこんなに頻繁にパーティーが開催されるのか?」とか、「さすがにこんなこと起こらないだろ!」というツッコミばかりしていて、いまいち感情移入できず、数話で見るのをやめた。

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ドラマのことなどすっかり忘れた頃、私はアラサーと呼ばれる年齢になっていた。ちょうどサブスクが普及し始めたのもあって、何の気なしにまたドラマを見始めた。すると「こういう男いるよね~!」「わかる~!」「このファッション可愛い~!」と、手の平を返したように、共感の嵐だった。あれからの数年間で人生経験を積んだ私は、このドラマの面白さにようやく気付くことができるようになったのだ。なんだか大人になった気がした。
そうして私はすっかりドラマに夢中になって、何度も繰り返し見ては、笑って泣いて、感嘆の声を上げた。

恋愛や結婚、仕事など、何事にも全力でぶつかって、欲しいものは自力で手に入れる。ミニスカートやキラキラのハイヒール、心踊るファッションを身に纏い街を闊歩し、面白そうなことには何でも挑戦する。年齢なんて知ったこっちゃない。何かあったとしても、それは全部女子会のネタにして笑い飛ばし、強く、賢く、美しく生きる彼女達は、いつしか私の「理想の30代」になった。

「30歳までには結婚して子供を産む」「それができなかったら売れ残り」「いい歳してそんなことして恥ずかしい」
年齢による呪縛はどこからともなくやってきては、無意識のうちに女達を洗脳していく。男だとなんてことないことが、女だと許されない。
実際私もそのうちの一人だったし、今思えば、30代以上の未婚女性のことを「かわいそうな人」だとすら思っていた。

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ところが、最強のロールモデルを手に入れた私は、30代になることがこれっぽっちも怖くなくなってしまったのだ。怖いどころか、むしろ楽しみになってきている。だって、彼女達はあんなにも楽しそうに生きているのだから。

もちろんここはニューヨークではなく日本だし、時代は令和、私はセレブでもないただの会社員。それでも、人生を楽しむために必要なマインドは、全世界共通なはずだ。

そもそも、人生100年のうちの30年なんて、全体の3分の1にすぎない。30代で年寄り扱いされていたら、60代はゾンビか何かになってしまう。30代なんて、人生の大先輩達からしてみれば、まだまだひよっこだ。

失敗したって笑い話にして、酒のつまみにでもすればいい。
とびきりのお洒落をして、大切な仲間と街に繰り出せば、誰の人生だって最高のドラマになるのだ。