コロナウイルス感染症による制限が緩和されたからか、SNSや街のポスターにはあらゆるイベント情報が溢れていた。夏だけでなく、秋以降のイベント情報も沢山ある。
秋は一番好きな季節だ。自分の誕生日が秋だから、ということもある。何より一番過ごしやすいことや、落ち着いて風情を味わえる季節だと思っている。紅葉狩りなど少し先の秋のイベントに心躍らせており、どのイベントに参加しようか今から悩んでいる。
イベントだけでなく、今年の秋は思い切って様々なことに挑戦しようと考えている。
「いつでもできるだろう」、と思うかもしれない。しかし今年の秋しか味わえない。
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今年の晩秋に私は30歳を迎える。20代前半は30代などまだ先のことと浮かれていたが、20代後半になってから時間が早く過ぎるように感じるようになり、気が付いたらもう30代に近づいていた。
30代になることに抵抗はない、しかし30代になっても同じように過ごしていくことに少し不安と焦りがある。書店に行くと、「30歳からはこれをしなさい!」や「20代のうちにやるべき100のこと」など、年齢がタイトルに入っている書籍に注目するようになっていた。しかしこの書籍を読んだとしても新しい自分にすぐなれることは、まずない。
30歳目前にして今後のことを考えるため、まず20代の出来事を振り返ったが自信を持って言えることが直ぐに思いつかなかった。就職活動や試験勉強など、懸命に取り組んだ記憶はあるが、これが自分だ!と誇れる経験とは言えない。
自分に自信が無くなってもやついていたある日、偶然「年齢制限」を目にした。30代になると年齢制限により、やりたかったことが急にできなくなっているような感覚がある。普段であればがっかりすると思うが、この時は違った。「制限」という緊張感があれば、工夫次第で何事もできるのではないか、と。
制限という単語を辞書で調べると、「許されること、限定を定めること」とネガティブな印象として捉えられてしまうことが多い。しかしこの時はこれまでのことを振り返っても達成感で満たされた思い出が出てこなかったのは、制限が無く緊張感が無かったために目標を作らず過ごしていたからだ、と思った。この調子で30代を過ごしたら、同じ後悔と虚無感を得続けるに違いない……。
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私は決意した。
30代になるまでの数か月間、年齢制限によりできなくなってしまいそうなことに挑戦することだ。決意してからの行動は早く、以前からやりたかったことやSNSなどで情報を探し、誕生日の晩秋までにできそうなことを決めていった。秋の旬を味わうだけでなく、コピーバンドライブに参加することや、新たな分野の職種を検討することなど……。
「かがみよかがみ」も大きな挑戦である。文章を構成することは大の苦手だ。しかし年齢制限があることに興味を持ち、30代になる前に一度自分の考えを表したいと思い勢いで投稿した。結果、数は少ないもののエッセイが採用されるまでに至っている。晩秋まで書き続けていく予定だ。
参考として、「適度な制限を人に与えると脳が活性化し、創造性が高まる」という研究発表もあるそうだ。人は制限がないと現状維持か安易な選択を選ぶ一方で、制限による緊張感で課題突破のためのアイディアが次々と出るとのことだ。
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今は夏真っ盛りで、秋はまだ先のように思える。しかし気付けば、秋は直ぐに訪れる。誕生日の秋までの数か月間、どこまで挑戦できるかはわからない。しかし30歳になるまでの期間と制限をもらったからには、この秋は風情を味わうとともに後悔しないよう様々なことに挑戦していきたい。そしてこれから迎える30代、誇れる自分として活動もしていきたい。