以前投稿したエッセイ「『モテ』のための長い髪を衝動的に切り、私の『改造計画』は終わった」を書いたころ、私は髪を伸ばすことにうんざりしていた。タイトルにもある通りそれは他者の目ありきの動機で、自分に嘘をつき続けるような状況がストレスになったのである。

◎          ◎

さて、それから1年半ほど経っただろうか。その後の私はというと、再び髪を伸ばしている。今度は他者の目ありきの動機ではない。自分がやりたい髪型のためである。

今でも私はショートカットとボーイッシュを相変わらず愛している。しかし、ショートカットではどうしても難しいことがある。インナーカラーやグラデーションカラーだ。ショートカットでもできなくはないが、やはりある程度の長さがあった方がいい。幸い職場も髪にはさほど厳しくはないので、奇抜な色にするなら若いうちだろうと思い至り、少しずつ伸ばし始めた。

鎖骨につくくらいには伸びてきたのが梅雨のころ。ここを乗り越えればあとはきっとイージー……とは思うが、いかんせん私は毛量が多いうえに髪室もしっかりしているので梅雨の時期は大変なことになる。せっかく伸びてきたが一度美容院で整えた方が良さそうだと考えた。とはいえただ切るのではつまらない。鎖骨につくほどの長さであれば、そろそろインナーカラーに挑戦できそうだと思い、インナーカラーを売りにしている美容院を予約した。

◎          ◎

インナーカラーは何色にしようか、髪型はどうしようか、とヘアカタログをパラパラと眺める。ここでちょっと辛口な私見を述べると、インナーカラーを売りにしている美容院の大半は、カラーのバリエーションと技術は素晴らしいがカットのそれらはいかがなものかと常々思っている。インナーカラーは映える。だが、それに甘えてカットはおざなりにしていないか。

頭を抱えたくなるくらい同じような髪型ばかりで、どうにも面白みにかけるなあと溜息をついた矢先、私は出会ってしまった。そう、ウルフカットである。やってみたいとは思いつつ、扱いが難しそうでなかなか挑戦できずにいた。

「ウルフカット、やっちゃう?」と自分に問いかけてみる。何か悪戯でも企むようにニヤニヤしたもうひとりの私が「やっちゃおうぜ!」と答える。こうして私はウルフカットにインナーカラーという、イメージチェンジもほどほどにしろと呆れたくなるくらいの組み合わせをオーダーすることになる。

◎          ◎

初めて行く美容院で、そんな突拍子もないオーダーをするのは怖くないかと言われたことがある。そんなとき私が思い出すのは、とある美容師に言われた「どんな髪型も髪色もメイクも似合う万能フェイス」という褒め言葉だ。この言葉に裏付けられた「まあ私なんでも似合いますし?」という自信と、なんだかんだ美容師というのはすごい人たちだという信頼がある(ここで先程の辛口は撤回しておく)。

結果、ウルフカットとインナーカラーという大胆すぎるほどのイメージチェンジは大成功する。毛量が増えて広がり、色は抜けてしまって明るくなり、しかし根元だけ黒いという荒れ狂いっぷりを見せていた私の髪は、綺麗なカラーリングとおしゃれなウルフカットで生まれ変わった。「ほら、やっぱり私なんでも似合うじゃん?」と柄でもなく自撮りをした。

そして、いつか憧れたウルフカットは、実は私の髪質に一番合い、一番扱いやすいのではないかということに気づいた。ウルフカットとインナーカラー、しばらくはこの組み合わせが私の中でのブームとなるだろう。こうしてまたひとつ「どんな髪型も髪色もメイクの似合う万能フェイス」という言葉が立証されたのであった。