本当に、ついこの間の話だ。
とある趣味のアカウントを作った。そこにぽつり、ぽつり、とまさしく独り言を置いていた。特別誰かと仲良くするつもりもなく、ただ一人気ままに呟くつもりだった。

でも、梅雨時期の私が珍しく“繋がろうタグ”なるものを使って自分の存在を主張した。
理由はよくわからないが、タグに使われていた「紫陽花」という言葉が気に入ったからだと思う。それくらい私は気ままに、そして自由にSNSを利用していた。そのときだろうか、出会った一人の女の子について話をしたい。彼女との出会いは、私の胸の奥のやわらかいところを包んでくれたから。

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彼女との最初の出会いは正直覚えていない。まだ数か月しか経っていないというのに、驚くほど覚えていない。けど気付いたら私の日常に彼女がいた。たまに通話をして、文面でも話をして、近すぎず、遠すぎず、良い距離感を保っていた。

ぐんと距離を縮めたのは、彼女が睡眠で悩んでいることを打ち明けてくれたときだった。自分も長らく睡眠については考えさせられていたから、互いに互いの睡眠リズムについての難しさを話した。「お互いぼちぼちいこうねぇ」なんて話していた。それから、なんとなく彼女のことが気になっていた。

話をしていて心地がいい。気遣い屋の彼女がもっと気楽に生きていける社会になればいいと心から思ったし、一つひとつ彼女のことを知るのが楽しかった。

ここだけ読まれると、ただの告白のような気がするが、そういうわけじゃない。ただ、私の中で大事件なのは、この年齢で「友人」というものができそうだ、ということだ。しかも、SNSを介して。
正直、これだけでも大事件といっても過言ではないのだが、まだこれは私の心の中だけで起きていることだ。私自身が整理すれば隠ぺいできる。そう思ったのだけど、
「オフ会しませんか」
彼女を含む四人の元に、上記の文字が現れる。ちょうどそのとき仲良くしていた人たち三人が案外近くに住んでいることがわかり、かつ、唯一遠くに住んでいる人がこちらまでやってくる用事があるというのだ。これは好機、と、彼女が私たちに上記の言葉を投げかけてくれた。

オフ会、最後にしたのはいつだっただろうか。仕事を始めてからこんなにワクワクするイベントをしたことはなかったかもしれない。私たちはそろって「もちろん」という返事をして、さっそく夏のきっと暑い日に会うことになっている。

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さて、隠ぺいしようしていた彼女への思いについて、思わぬ形で表に出ることとなりそうになっている。まあ、隠すものでもないのだが単純にこのSNSという広大な海の中で出会ったたった一人の子が、どこか惹かれて、心地よいなんて、自分でも正直信じられていない。それなのに、トントンと進んでいく現状に少しばかし驚いているのだ。

ただ、一人きりでのんびりとSNSをやっていくのも悪くなかった。
けれど、梅雨時期の私が人を求めた。そして出会った奇跡。それがまた新しい私の物語を作っていく。

そんな彼女と、つい先日二人きりで話すことがあった。なんてことない話だった。趣味の話とか、睡眠の話とか、そんなことを話していたのだけど、二つ驚いたことがあった。
ひとつは、彼女も「かがみすと」だったということ。
エッセイを読ませてもらったが、彼女の精一杯の思いがそこに書かれていた。衝撃的だった。
そしてもう一つは、「中学生くらいのとき、万里ちゃんと一緒のクラスだったら私の世界は変わっていたかも」と言われたことだ。深い話はきいていないが、きっと彼女も学生時代になにかしらの思いがあるのだろう。それを変えたいと思うくらいには。そんな要素の中に私の名前が出てくることに驚いた。一方的に私が彼女を思っていると考えていたから。

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出会ったときから、なんとなく波長が合う気がする子だった。無理をしなくてもいいようなそんな不思議な雰囲気を持つ素敵な子だった。そんな子と私は今度オフ会をする。オンライン上ではなく直接お会いして、何を話すのだろう。もしかしたら、まるで学生時代の友人だったかのように会って、話して、「それじゃまた」なんて言って別れるのかもしれない。

それくらい心地の良い彼女と、そして彼女たちと出会えることをとても楽しみにしている。
SNSが繋いでくれた、私の大事件。それはこれから起こるだろう心地の良い不思議な時間。