「面白く……はないな」
 苦笑いで言われたあの時の言葉が今でも脳にこびりついてる。

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小さい頃から本が好きだった。小学生の頃は休み時間はいつも図書室にいるような子だった。冊数制限ギリギリまで借りて2日も経てば読み終わりまた新しい本を借りる。
私はクラスでは有名な本の虫だった。
「よくそんなたくさん本を読めるよね。うち、親に読めって言われるんだけど読みたくないもん」
クラスメイトが私を羨ましがるのと同時に私もクラスメイトが羨ましかった。

本を読みすぎて勉強が疎かになると幼少期の私は本を取り上げられることがしょっちゅうで隠れて読んでいたからだ。本を読みなさいと怒られるなんてなんて幸せなことだろうと思っていた。
それだけ本が好きな私はいつからか作家を夢見ていた。

あんな素敵な物語が書けるようになればなと思うと同時に、無理だ、馬鹿にされるかもしれない、という思いもあり誰にも口に出さずにいた。けれどどこかで自分には実力があるとも思っていた。

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そんな考えが打ち砕かれたのは小学校の授業でだった。
「小説を書いてみましょう」
短編と言われるものではあったが小説を書くことになった。クラスでは不満の声が響く。そんな中私はワクワクしていた。
書き始めるのも書き終わるのも一番だった。常に妄想していた話を字に書き起こせばいいだけだった。
いざ書き終わりクラスメイトと交換する。
「どう?」
読み終えたクラスメイトに聞けばこう言われた。
「面白く……はないな」
小学生だ。悪気はない、きっと思ったことがそのまま口に出てしまっただけなのだろう。けれどその言葉は私にとってかなりショックなものだった。

家に帰るとすぐに原稿を捨てた。その後にふつふつと私の中からどこにぶつければいいのか分からない怒りが込み上げてきた。そして私は何度も小説を書いた。
誰に見せるわけでもない、けれどもう2度と面白くないとは言われたくなくて色々な小説の書き方の本を読んだ。

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世に見せてもいいと決心ができたのはそれから6年後のことだった。
webで募集しているコンテストに出してみたい、そう思いサイトに登録した。そこから私の第二の執筆人生が始まった。
まず驚いたのは周りが皆上手なこと。何故デビューしていないのだろうと思ってしまうほどの人がたくさんいて作家になることの難しさを実感した。
けれどそれと同時にワクワクが止まらなかった。webにもたくさんの名作がある、この名作たちに並びたい、そう思いひたすらに書いた。もうこれ以上は出てこないと思うほどアイデアを絞り書いた。

結果は中間選考通過止まりだった。けれど私の小説が面白くないから少し面白いに変わったような気がしてすごく嬉しかった。

それからも今の今まで小説を書き続けている。たくさんの執筆仲間とも繋がった。私の生活が間違いなく彩られた。
作家になりたいという夢は今も叶えられていない。まだ道半ばだ。
けれど今の生活が彩られているのは間違いなく作家になりたいという夢のおかげで、あの時の「面白くない」という言葉からの悔しさなのだと思う。