私は、お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる。恐らく、肌が白い方なのと、皮膚が薄いせいだ。1杯飲んだだけでも、顔のあたりはだいぶピンク色に変わる。
だから、一緒に飲んでいる人たちには割と心配される。

この状態ですすきのあたりを歩いていると、ナンパやキャッチにも遭いやすい。ついてこさせるのに好都合な、酔っ払った女に見えるからだろう。

それに、そもそもの私が多分、ついてきそうに見えるのだ。何かの本で、ナンパ師の意見を読んだことがある。「メイクや服装はそこそこ今時っぽくしているのに、靴やカバンがボロボロな女」が狙い目だ、と。確か、そういう女は警戒心はそれほどなくて、それでいて考え方が緩いからついてきやすいのだ、という理屈だった気がする。

私は歩き方が変なせいで、すぐ靴をボロボロにしてしまう。歩くとき、足が十分にあげられていなくて、地面に擦ってしまうのだ。買って1週間の靴は2ヶ月ほど履いたような風合いに、2ヶ月履いた靴は1年ほど履いたような風合いに進化させてしまう。

だからといって、サクサクと買い替えることもできない。手取り20万円以下の会社員が買えるのは、多くて1シーズン1足といったところだろう。なので、そんなふうに靴がボロボロな私がお酒を飲むと、「ついてきそうな女」が完成してしまうのだと思う。

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だが、顔がどんなにピンク色に染まろうが、私はわりかし頭ははっきりしているのだ。記憶をなくしたこととか、何かを壊したこととか、酔っていないときに絶対しないであろう行動はしたことがない。

別にお酒に強いわけではないから、足どりが危うくなることはある。けれど、そういうときは車道側に寄らないようにしなきゃ、と判断できる程度には、理性が残っている。なので、ナンパもキャッチも全然振り切れる。男友達と終電を逃したとしても、絶対にタクシーを呼ぶ。

この間友達と飲んでいたとき、飲みすぎて吐き気を感じ、トイレで吐き、店内で残りを吐いたりしたらやばいな、と思い、外のベンチで寝転がっていた。通りがかった知らない女性が「大丈夫?」と訊いてくれたので、余計な心配をかけてはいけない、と思い、極力はっきりした声で「大丈夫です、ありがとうございます」と伝えた。

どんなに酔っぱらおうと、飲んでいないときと同じ価値観で物事を判断することはできるのだ。身体の方はアルコールに侵食されていたとしても。

そして私には、二日酔いという症状が出たことがほとんどない。
少しだけ頭が重いような気がしたりすることはある。けれどそれは、寝すぎたときに感じる程度の、ほんのりとしたものだ。仕事や家事をするのに支障をきたすほどの症状にはならない。

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だから私は正直、お酒というものを舐めている。
お酒で何かが破綻したり、やってしまった経験というものがない。翌日の体調不良に追い込まれたこともない。

私は今年で25歳になる。この年齢でお酒の怖さを知らないというのは、逆に恐ろしいことのような気もする。けれど別に、知りたくもないし。ていうか、この年齢から初めてお酒の怖さを知りにいくのって、ちょっと痛々しいようにも思えるし。

どうせなら、20歳前後で通っておくべきだったんじゃないだろうか。そう考えると、今現在のお酒との距離感が、私には適切なのかもしれない。