私は、私をハイな気分にさせて、素の自分をさらけ出す勇気を与えてくれる「お酒」が大好きだ。
人見知りが大人になった今もなかなか克服できない私の背中を押して、私を無邪気にさせてくれる唯一の存在が「お酒」なのだ。

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以前営業の会社に勤めていた時も、飲み会の席で社長にそのことをポロッと相談した。
その時、彼が私に言い放った一言も「営業(外回り)行く前に、1杯ひっかけてみるのは?1杯なら仕事にだって全く支障はないでしょ。それで仕事の効率やパフォーマンスが上がるのなら俺は認めるよ。そのほうが、愛想良くて今みたいに生き生きしてるよ!」と、言われるほど。
何となく自分自身でも、ほろ酔いの状態の自分の時は、人見知りなど周りを気にせず「素の自分でいられる」、覇気がある感覚はあった。

言葉が喉に詰まることなく、相手の顔色を窺い黙り続けることなどなく、思ったことを素直に相手に伝えられ、気分もスッキリすることが多かった。
素の自分をさらけ出す少しの「勇気」さえあれば、何も問題ないコミュニケーションが取れるのに、そのほんの少しの勇気の欠如のせいで、私は「本当の私」に成りきれなかったのだ。
「今この場で、この気持ちを、直接相手に伝えられたら良いのに……」と、事あるごとに何度悔しいと感じたことか。
この自分の中にあるモヤモヤを何とかしたい……と、大人になって発見した自分なりの解決方法が「お酒」だった。
ましてや、勤め先の社長にハッキリ「〇〇らしい!生き生きしてるよ!!」なんてアドバイスを貰ってからは余計に、「私のエネルギースイッチは、お酒にあるのかもしれない……」と、強く感じるようになった。

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「このコミュニティーには、私には、あなたが必要!!」
ふと気づくと、ずっとずっと尊敬していた女性ランナーに、直接そう叫んで自分から彼女にハグをしていた。彼女は3年前に交通事故に遭ってから、奇跡の回復を遂げ、再びボストンマラソンを走るランナーになった。地元では、彼女のことを知らない人がいないくらい、超有名なスーパーエリートランナーだ。
事故以来、思ったように練習が進まず、期待通りの走りが出来ない彼女は葛藤していた。彼女なりの治療や練習法を工夫していても、やっぱり周りと比べてしまって、「ベストを出したい!表彰台に上がりたい!!」と、ランナーの欲が出てしまうのだろう。
そんな彼女の姿を大会で見かけるたびに、彼女がFacebookでもどかしさの近況をあげるたびに、「次は、あなたの時代よ!!」と明るく声をかけてくれる彼女の姿に、私は「あなたと正々堂々と走りたい。あなたを追いかけ続けたい!!」と、彼女に語り続ける。

とあるレース後、それぞれの活躍をビールで祝福し、良い感じに酔いも回っていた。彼女と久しぶりに一緒に走れたことが、とても嬉しくて嬉しくてたまらなかった。ゴールでは互いに手を取り合い、彼女とハグを交わしていた。
普段の私なら、たとえ憧れの人だとしても自分からそんなことする勇気がないのに。
「お酒」が私に勇気をくれる、「大切な人には、思ったその時に、その本音を伝えなきゃいけないよ!!」と。
だから私は、「本当の私」でいさせてくれる「お酒」が大好きなのだ。