子どもが欲しい……。この思いを切実に、リアルに感じはじめたのは30歳になってから。きっかけは婦人科検診だった。30歳を機に女性として身体に向き合おうと決意して受けた初めての子宮頸がん検診。これまで健康が一番の売りだったので今回も何事もなくクリアできるだろうと思っていた。
だけど結果は「再検査」。後日これまでまったく縁のなかった総合病院での精密検査で明かされたのは、私の卵巣の両側に嚢胞ができているということ。幸い手術するほどの大きさではなかったのでホッとした反面、思わぬ爆弾を抱えてしまったことに対してショックを受けた。私も歳をとったのだ。
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2年前の28歳のとき。世の中でコロナが流行りだし不安に包まれる中、私は5年間勤めた会社を辞めた。もっといろんなことに挑戦したいと地方に移住したり、その地域でのボランティアに精を出した。20代の残りの2年間はジェットコースターのようにやりたいことをやり尽くした。
今年で31歳になった。今でも20代のときのような勢いや好奇心が衰えることはないのだが、同時にどこかそろそろ落ち着きたいという相反する気持ちが存在するようになった。卵巣に嚢胞があるからといって妊娠できないわけではない。だけど20代のときには気にしたことがなかったような焦りが生まれてきた。
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なんで今になってこんなに子どもが欲しいんだろう……。自分に何度問いかけても不思議なことに答えが出ない。これは人間の本能なのだろうか。周りの同級生はどんどん家庭を築いて子どもを産んでいる。
そんな状況に、20代のときのように純粋に好きなことに取り組むことに対する罪悪感を覚えるようになった。周りの人は誰かのために生きているけど、私は自分の好きなことをするためだけに生きている。これからもそうなのかな、ずっと私は一人ぼっちなの……と思うと途轍もない寂しさに襲われ涙が溢れる。いつの間にかYouTubeに投稿されている知らない人の赤ちゃんの動画だけが心の癒やしになっていた。
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それでも私は自分に正直にしか生きられない。好きなことはやらずにはいられないし、赤ちゃんが欲しいからといって相手は誰でもいいわけではないから出会いには慎重になる。もちろん結婚や出産だけが幸せではないこともわかっている。焦っても、たらればを浮かべてもしょうが無いということも。
31歳になった今、人には歳とは関係なくそれぞれのペースがあるのかもしれないと思うようになった。みんな同じように歳を重ねているようで、そうじゃない。来るべきときにそのタイミングが訪れているのだと思う。
今できることはこの瞬間出せる力を惜しみなく出して自分を高め、成長させることだ。目の前のことに精一杯取り組むことで新たな扉が開くのかもしれない。そして本当に欲しかったものが手に入るのかもしれない。確証はないが、30代まだまだこれから、ウジウジしてはいられない。景色は信じられない速度で変わっていくけど、20代の勢いは胸に残して、前だけをみて走り続けよう。