「仕事楽しい?」「仕事のモチベーションは?」「辞めたくならないの?」

私はこのどれにも明確な答えを出すことができない。現に、同じ質問を先輩方に投げかけたこともある。もちろん返ってくる答えは同じ。「なんでかな?」

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実際、あまりに大変で自分の自由な時間なんてほとんどない。皆が逃げ出したい気持ちと戦っている。今日こそは早く帰るぞと意気込んでいる。そんなものは日々、呆気なく崩れ落ちるのだが。けれど、「じゃあ辞めれば?」と言われても、絶対に「うん、そうだね」なんて答えられない。むしろ「簡単にそんなこと言ってくれるな」と少なからず憤りを覚える。なぜかって?答えは一つ。私はきっと、この仕事が好きだから。

9時に出社して17時に退勤する。間には1時間の休憩。そんな当たり前の時間感覚なんてどこにもなく、休憩や食事だってまともに取れない。ましてや華金なんてそんなものは存在しない。休日出勤も当たり前だし、終電後も仕事を続けてタクシーで帰宅することだってある。そう、この仕事は普通じゃないのだ。人間らしい生活なんて望めない。デートだってまともにできなければ、友達とご飯に行くことさえままならない。この仕事のために諦めたことだってたくさんある。こんな仕事を続けるなんて可笑しいと笑う者もいるだろう。でもその分、普通に生きているだけでは味わえないであろう感情を得ることができるのだ。

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会ってみたい人に会えるのはこの仕事の醍醐味。そのために日々時間を、体力を削っていると言っても過言ではない。テレビの前で応援していた人が目の前にいるのだから。望めば海外に行ける機会だってある。海外のスタジオや高い技術を持つスタッフとともに仕事ができるのだ。眠い目をこすりながら、ときに罵声を浴びながらも、自分たちの作り上げたものが、多くの人の日常の中に溶け込んでいる様に非常に気持ちが高揚する。

結局は納品したときの、あのなんとも言えない達成感に取り憑かれてしまっているのだろう。どれほど大変だったとしても、一度終わってしまえばまたやりたいと、次はもっと技術を上達させたいと、そう願う気持ちが沸々と湧き上がってくるのだから。

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この業界にはありえないほどたくさんのチャンスが転がっている。それがエンタメの世界。人々の娯楽のために身を削る思いでそれらを作り上げる人がいる。それもまたエンタメの世界。やりたいと申し出れば、それをバックアップしてくれるだけの体制が整っている。普段の激務をこなしながら自分のやりたいことを両立させるのは決して簡単なことではない。けれどそれでも、それでもと強く願う気持ちがあるから私はこの仕事を辞められない。

つまるところ、私はこの仕事の虜になってしまったのだ。何が楽しいのかも、面白いのかも、明確に答えは出せない。それでも手放してはいけないと身体の全細胞が声を大にして言う。次の私の目標は、仕事に私の虜になってもらうこと。