お酒との距離感。家族と楽しむ大切な時間。
私は二十歳を超えているし、法律上は飲んでも何の問題もない。けれどあまり飲んじゃいけない。
というのも、精神科に通っており、薬を複数服用している。そのために飲酒を控えるよう医師から言われているからだ。

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だからこそ私の中でお酒はちょっと特別な存在。ひとりで飲むなんてことはしない。
私が飲む相手はもっぱら家族。父親と祖父とばかりだ。
父親と飲むときは日本酒が多い。最近私がはまっているから、父親が付き合ってくれている。夏は冷酒ばかりで、さっぱりと飲めておいしい。

祖父と一緒の時は麦焼酎の熱燗。日本酒を飲ませると酒癖が悪くなるからね。
それをちょっと特別なメニューの時に飲むんだ。お鍋とか、焼き肉とかさ。
みんなでご飯を食べながら飲む時間はとっても楽しい。今日何があったとか、最近どうしているとか、たわいのないことを話すのが好き。普段のご飯だとあまり言えないけど、お酒が入ると喋りやすくなる。私なら、友人と喧嘩したとか、病気の具合がどうとか。

家族と飲むときは、飲みすぎたらたしなめてくれるから安心して飲めるんだ。と言っても潰れる前に止められるから、一回潰すべきじゃないかとも言われているけどね。
お酒との距離感をつかむためには限界知らないとってね。

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家族と話す時に飲むお酒は楽しい。でも、これじゃ物足りない。だって彼らは一緒にいないから。
私の中には複数の人が生きている。おかしいって言われるかもしれないけど、私にとっては真実で、大切な存在。清酒が好きなカーメリアステルさん、甘いお酒が好きなラナトゥルスくん、ビール好きのローゼスティエくん。それ以外にもまだまだいる。
その中には成人している人もいる。今例に挙げた三人も、ね。

夜中気づけばお酒を酌み交わしているんだ。カーメリアステルさんの上にラナトゥルスくんが座って、イチャイチャしながら。ラナトゥルスくんとローゼスティエくんのお父様がカーメリアステルさんだからね。久々の父にずっと甘えているみたいなんだ。
いいなぁって思えるよね。私も家族なのに、一緒に飲めないんだって思うとさ。ちょっとすねたくなっちゃう。

そうして唇を尖らしていたら「いずれ飲みかわそうぞ」とカーメリアステルさんが言ってくれるんだ。「僕も飲みたい!」とラナトゥルスくんも言うし、「俺も飲みたい。そっちの酒も」とローゼスティエくんも言ってくれる。だから慰められているけどね。

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どうやったらお酒が飲めるか考えてみた。大きな姿見を用意して、向き合って飲む?ううん、姿見に彼らは映らない。私の前に見えるけど。
それなら初めから普通に飲めばいいとひらめいた。彼らは向こうの世界で、私はこっちの世界でって。だって見ることはできるのだから。
はたから見ればひとりで飲んでいる人だけど、私からしたら違うから。孤独じゃないよ、彼らがいるからね。

お酒との距離感。家族と大切な時間を過ごすのに必要だったりするもの。
触れられるか触れられないかの違いはあるけど家族であることに変わりはないから。いつかその家族に、恋人も加わればなとは思うけどね。