シャワーでお湯を出すと聞こえる異音。
所々に見られる黄ばみ。
そろそろリフォームを考えてもいいレベル。
そんな犬屋敷家のお風呂場だけれど、幼い頃の思い出がいっぱい。

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赤ん坊の頃は、祖母や母に抱っこされながら、お湯に浸かっていた。
私は手足をバタバタしながら、嬉しそうに終始ニコニコ。
ウトウトしてしまうことも多かったようで、寝ぼけて祖母のお乳に吸い付こうとしたことが何度もあったらしい。
育児は大変なので、祖母たちはすぐに出たかったと思う。
しかし、お風呂が大好きだった私は「もっと入っていたいの!」と言わんばかりに泣き出して、いつも祖母たちを困らせていた。

幼稚園から小学生までは、よく母とお喋りしながらお風呂に入った。
幼稚園や小学校であったことや、家族みんなについての話。
お風呂にいると、普段話せないことも話せてしまう。
楽しいひとときは、あっという間に過ぎてしまうもの。
「のぼせちゃうから、そろそろ出ようか」と母に言われ、何となく寂しい気持ちになっていた。

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他にも、お風呂で必ずすることがあと2つあった。
1つめは、タオルクラゲ。
タオルを浮かべ、空気を入れて丸く膨らませたら一気に沈める。
シュワシュワと音を立てながら、タオルがしぼんでいく。
ただそれだけなのだけれど、子どもの私からしたら楽しい遊びだった。
母に教わってから、毎日のようにしていた。
何度やっても飽きないくらい、当時の私はハマっていた。
2つめは、歌を歌うこと。
となりのトトロの主題歌「さんぽ」を、当時流行っていた替え歌で元気に歌っていた。
歌詞のおしりを食べ物にするというルールで、母と何の食べ物にしようかと一緒に考えていた。
それから、ザ・ドリフターズの「いい湯だな」。
私の中で、お風呂の歌といったらこの歌。
大人になった今でも、たまに歌っている。
元々、祖父が歌っていたのを聞いて、私も真似するようになった。
実は、高校生になるまではこの歌をずっと童謡だと思い込んでいた。
何となくテレビを見ていて、たまたまドリフの存在を知った。
そして、ドリフの歌だったという衝撃を受けることにもなった。

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社会人になった今は、ササッとシャワーを浴びて終わりということが多い。
ゆっくりお湯に浸かって、気分良く「いい湯だな」を歌えるのは、週に一度できるかどうかといったところ。
帰省するたびに、母が「お湯をためようかね」と言って、浴槽にお湯を張ってくれる。
ゆっくり浸かって、少しでも東京での疲れが取れればという母なりの気遣いなのだろう。
入っている間は、昔お風呂場で過ごした時間を思い出す。
「懐かしいな」「あの頃に戻りたいな」という気持ちになる。
いつか自分に子どもができて、一緒にお風呂へ入る機会があると思う。
そのときは、あの頃の母と私のように、ざっくばらんに話したり、一緒に「いい湯だな」を歌いたい。