私、このまま仕事続けられないかもしれない。
新卒で居酒屋チェーンを運営する会社に入社して4年目の11月、仕事への意欲がふっと途切れた。

それでも気持ちを押し殺して働き続けた。居酒屋は年末年始がいちばんの稼ぎどき。こんなときに「辞めたい」なんて言えない。自分の途切れた気持ちは、年の瀬に近づく日々で紛らわしていた。

けれど、年末年始を終えていよいよ働く意欲が底を尽きた。上司に相談したところ、1週間後に飲みの席で話す時間をくれることに。やっと自分の気持ちを伝えられる!と、その日を心待ちにしていた。

しかし相談したときに返ってきた上司の言葉は、私がここ3ヶ月ずっと待っていたものとはまるでかけ離れていた。

◎          ◎

仕事への意欲が途切れる1ヶ月前、職場環境がガラッと変化した。

まずは、店長だった私が「マネージャー業務」を任されたこと。今まで1店舗の担当だったのが3店舗に増えた。仕事量が増えるのは目に見えていたが、目指していたポジション。期待されたことが嬉しく、頑張ろうと張り切っていた。

もうひとつは、同じ店舗で働く人の異動。異動先は近隣店舗だったが、のちにこれが私にとって大きな影響を及ぼすことになる。 

10月に入り新体制でのスタート。自分が店長を務める店は、アルバイトと新しく入った社員に任せて、他の2店舗を重点的に見るようにした。上司にもそう指示されていた。

ただ、早くも歪みが生まれた。私が店にいないことで、新しく入った社員の負担が重くなったのだ。

「この状況が続くなら辞めたい」

仕事量が増えて疲れたときに送られるLINEは、私の精神的負担にもなっていた。

◎          ◎

このことを上司に伝えると、すぐその社員と面談してくれた。幸いすぐ辞めることはなさそうだが、のちに私は上司にこう言われた。

「いったん自分の店に戻ってほしい。今はエビアンの成長より離職を防ぐことが優先だから」

反射的にわかりました、と答えていた。反発する理由もない。けれど、自分の成長の可能性が閉ざされたのが悔しかった。それも、人手不足という私にはどうしようもできない原因で。

自分の店に戻ると、アルバイトと新しい社員がとても仲良くなっていた。すでに何度も一緒に飲んだらしい。勝手に疎外感を覚えた。

自分の店なのに自分の居場所がない。大切に育ててきたアルバイトへの当たりが強くなり、次第に距離を置くようになった。

そして何より辛かったのは、この小さな不満を話せる人が身近にいなかったことだ。

以前は、話したいことは何でも同じ店の社員に話していた。もちろん今でも電話をすれば聞いてくれるが、わざわざ話すほどのことではないと遠慮していた。 

しかし、この蓄積が私の働く意欲をどんどん削ぎ落としていく。

◎          ◎

私、もう働きたくないです。

深夜まで営業する地元の居酒屋で、ここまでの話と働く意欲が途切れたことを上司に相談した。

「そりゃ俺だって働きたくないよ!でもさ、生きていくためにはやっぱ仕事しないとじゃん!」

ああ、全然伝わっていない。もう、絶望した。
私はただ、「休みな」と言ってほしかった。

新しいポジションで奮闘して、新しい社員によるフラストレーションに耐えて、精神的に参った状況で。私にはもう、「次の日職場に行く」選択肢は残されていなかった。 

「察しろ」がいけないことはわかっている。もう無理、休む!と駄々をこねればよかったとも思う。けれど、何ひとつ労いの言葉が無かったことに、絶望した。
次の日から私は、職場に行けなくなった。

私はただ「休みな」と言ってほしかった。

けれど、もし「休みな」と言われても素直に休んで退職していたと思うし、現に言われてなくても休んでしまった。

人からどんな言葉をかけられても結局、自分の行動は自分しか判断できないらしい。