2021年1月9日、私はTwitterを見ていて、「ついに私の推しについて語る時が来た」と思った。『スネイプ先生』というワードが、トレンド上位に入っていたのである。あの「ハリー・ポッター」シリーズの、粘着質なスネイプ先生だ。

(注釈1、この文章にはハリー・ポッターシリーズの、ストーリー根幹部分のネタバレが含まれます。
注釈2、1月9日は、スネイプ先生のお誕生日でした、おめでとうございます)

私はスネイプ先生が大好きだ。それはもう、小学生の頃から、ずうっと一途に推してきた。同志を探し続けてきたが、リアルの友人には全然共感を得られなかった。しかしシリーズが終了した今も尚、お誕生日にはTwitterのトレンドワードに浮上するほど、先生は広く愛されている。

スネイプ先生は冷静沈着なキャラクターだと思われがちだが、実際は全くもって冷静じゃない。先生の中で始終轟々と燃え盛るのは、巨大なコンプレックスだ。先生自身、その炎で身を焦がして常に火達磨であり、こちとらファンは、その姿を脳内に思い描いて萌えている(先生ごめん)。こんな爆弾みたいな危険な塊、マグルの世界では見たことがない。そんなコンプレックス爆弾、そんなスネイプ先生の、私が思う推しポイントを3つ、紹介したい。

スネイプ先生の3つの推しポイント

スネイプ先生の推しポイント1つ目は、「ハリー達に対する懐の浅さ」。自身の出自をシリーズ序盤では詳しく知らないハリー。彼の幼くて純粋で、反抗的な眼差しから、先生が自分を防衛するために使えるものといったら、長年こねくりまわしたドス黒い感情論と、教師という立場だけ。切ねぇ。

スネイプ先生の推しポイント2つ目は、「ハリーの父親に対する劣等感の深さ」。『アズカバンの囚人』以降、ハリーの反抗的な態度に引きずられて思わず、ハリーの父親への恨み辛み、罵詈雑言が、先生の口から溢れだす。『不死鳥の騎士団』で先生が震えながらも、沸き上がる怒りを押さえつけ、憎き宿敵の息子と対峙する様子は、読者として読んでいてとても辛いものがある。今すぐに守ってあげたい、私が。

スネイプ先生の推しポイント3つ目は、「ハリーの母親(リリー)に対する愛の重さ」。先生は『死の秘宝』において死の間際、ハリーに『僕を……見て……くれ……』と呟く。シリーズ内で再三繰り返された、ハリーの瞳はリリーの瞳と同じ色をしているというフレーズが、ここで活きてくるかと。そして最後にはその瞳で「僕」を見て欲しかったと。エ、エモすぎィ……!!

また、生前の先生が、ダンブルドアの前に「銀色の牝鹿」の守護霊(リリーと同じ)を出現させるシーンも、涙無しには語れない。ダンブルドアに対して、リリーを永久(とわ)に想い続けることを告げるスネイプ先生。

スネイプ先生の死の直後、ハリーがその「銀色の牝鹿」を魔法を通して目撃したことで、先生とハリー自身のこれまでの関係性の全てが、愛そのものに変わるんですよ……。はあぁぁ……(くそデカため息)。なんてお耽美なの……???

澄んだ人間性を持ち合わせるスネイプ先生。私も彼のようになりたい

懐が浅くて、劣等感が深くて、愛が重い。それらを一緒くたに抱え込むキャラクター性の、なんと脆く、美しいことか。そんなスネイプ先生は抱えている葛藤が混沌としている分、本人の純粋さが際立って、私には先生がとても澄んだ人間性をしているように思える。先生の魅力には天井も底もない。私はもう20年近く、先生を癒したがっている。

叶うならば私はスリザリンに生徒として入って、マルフォイよろしく先生に気に入られたい。私もポッターに、しょ~もないちょっかいを掛けて、先生と意地悪く笑ってみたい(この辺がリアルの友人に共感されない)。もしも同僚になれるのならば、絶対早い内にこの葛藤に勘づいて、事情は聞かずに遠回しに支えてあげるのだ。

だけど、先生がこんな風に壊れながらも使命にのめり込んでいく姿に、何故か激萌えして妄想が膨らむ私。これはヲタクの性なのか。

先生は毎晩自分の部屋でスコッチウイスキーで晩酌したりしてたのかな…不意に夢の中にリリーとの美しい思い出が現れて、枕を濡らしたりしてさ……きっと自分の精神を安定させるために、魔法薬を夜な夜な調合してたんだろうなぁ……あ~もうッ、強く抱き締めたいな?!?!

スネイプ先生は、巨大なコンプレックスを丸飲みしたままに散っていった。でもその様子は、「ハリー・ポッターシリーズ」に触れる人の、心の中にある劣等感も、同時に浄化してくれているのだと思う。だからこそ私は、先生のマグル臭い生き様を物語の中で辿ると、ただ悲しいだけではなく、愛しく感じてしまう。私は、先生の書くエッセイが読んでみたかったなぁ……。

私はスネイプ先生が大好きだ。その想いはもはや限界突破して、「私も誰かにとってのスネイプ先生になれたら」「私の書いた文章を読む人のコンプレックスも、蛇のように丸飲みにして、お腹の中で処理することができれば」と、憧れの眼差しを向けてしまうのである。

そんな訳で、コンプレックス爆弾のスネイプ先生は、とにかく、尊い。