コーヒーってどうして大人を象徴する飲み物に見えるのだろう。

コーヒーを飲んでいる人はカッコよく見える。The 大人っていう感じがして憧れる。大人を象徴する飲み物にはビール、ワイン、ウィスキーといったものもあるが、コーヒーにはアルコール類よりもダンディさがあるような気がする。
私の場合、コーヒーをイメージすると渋めのおじさんが窓際でコーヒーを飲みながら読書している姿が目に浮かぶ。
コーヒーはどこかイケてる。そんな印象だ。

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アルコールは二十歳を過ぎないと飲むことができないが、コーヒーには年齢制限がない。成長期にカフェインを摂り過ぎると眠れなくなるといったように身体に良くない場合もあるが、量を加減すれば飲める。
小学生の私は休日にコーヒーを飲む父をじーっと見て、「あれが飲めるようになれば大人だ!!!」と目をキラキラさせていた。
小学生の私は子ども。でもコーヒーを飲めばたちまち大人の仲間入り!
子どもの頃の私はそう思っていた。

小学校の高学年くらいになると、「もうコーヒーを飲んでも平気だろう!」と思い始め、父にコーヒーを淹れてとおねだりをした。父はドリップコーヒーを私に淹れてくれた。
コーヒーの匂いはとても苦そうで、見た目も焦げ茶。しかし、コーヒーカップを持つだけで私はそれっぽい大人になれた気がした。
初めてのコーヒーの味は苦すぎて悶絶……あまりの苦さで言葉にならなかった。コーヒーを飲むという通過儀礼を行うことで大人になれる!と思った私の野望は儚く散ってしまった。

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小学生の時に断念したコーヒーだが、再び飲み始めたのは大学受験の頃だった。夜遅くまで起きて勉強するためにコーヒーを飲んでいた。
別にコーヒーが好きだったから飲んでいたのではなく、眠気覚ましのために飲んでいるだけだった。しかし私はカフェインが効かない体質らしく、コーヒーを飲んでもすぐに寝てしまった。
高校生になった私にとってもコーヒーは苦い飲み物であり、好きにはなれない味だった。コーヒー豆の種類を変えれば味も変わると思い、別のコーヒー豆を買ったこともあったが、苦さは変わらない(当たり前なのだが……)。コーヒー豆を変えても寝てしまう。そして、いつの間にかコーヒーを飲まなくなってしまった。

その次にコーヒーを飲んだのは大学生になったとき。このときも眠気覚ましのために自動販売機でコーヒーを買った。あまりの眠さにコーヒーをがぶ飲みしてしまったが、その時に驚いたことがある。
“コーヒーが美味しい”と感じたのだ。何故かは分からない。しかし、今までのコーヒーとは違ったような気がした。ドリップコーヒーよりも自動販売機の方が品質が高かったのか、もしかしたら私の舌が自動販売機のコーヒーを求めていたのかもしれないが飲むことができた。

「もしかして大人になったからでは!?ついに!コーヒーデビュー!?」
……と思ったのはここだけの秘密にしておこう。