小さいときから母に早く寝なさいと言われてきたせいか、または体力がないせいか、私はあまり夜更かしが得意ではない。もちろん友だちと飲みに行くのは好きだし、友だちと過ごす夜はあまりに楽しくていつまでも起きていられる気がするのだが、12時を過ぎたくらいからだんだんと頭の中の歯車が嚙み合わなくなってしまう。1時を回るとあくびが止まらなくなり、家に帰ってから最短でベッドに辿り着くにはどうしたらよいかを考え始める。

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加えて友だちといるときには優柔不断な性格故に相手のペースに合わせて動くので、気づかないうちに気力を消耗している。楽しさと反比例してHPは減っていくのだが、どんなに疲れて帰ってもシャワーを浴びずにはベッドに入れないので、帰宅から眠りにつくまで1時間はかかる。どんなに楽しい夜も、夜が更けてくると私の頭は寝ることにシフトチェンジしてしまう。私はなかなか夜更かしができない。

そんな私が夜更かしをするのは、大体連休前の金曜日だ。シフトで働く私は、土日休みが貴重でその週末を如何に楽しむかを重視している。土曜日の夜は飲みに誘われるかもしれないし、日曜日の夜は次の日に備えてできるだけ早く寝たい。そうなると、金曜日の夜が唯一私のために使う時間になる。誰かと飲みに行くことももちろん楽しみのひとつだが、誰のペースにも合わせなくていい、自分のための自分だけの時間というのは、独身の今しかないだろう。

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金曜日の特別な夜、やっぱり私は映画を観たくなる。私がよく観るジャンルは大体ラブロマンスかヒューマンドラマ系で、現実からそう離れないものを好む。スーパーでビールとスナックを買って、現実にありそうでないロマンチックでドラマチックな世界に浸る2時間は幸せそのものだ。あまりお酒に強いわけではないので、映画を観終わる頃にはほろ酔いでうとうとしている。夢と現実の間で、映画の世界に入り込んだような気分になるこの時間が堪らないのだ。自分も映画の登場人物の一人になったらどのポジションにいるのかな、とか、職場でどんな存在なのかな、とか、誰と恋に落ちるだろうか、とか、そんなことを考えているといつの間にか眠りに落ちている。

つい、現実逃避したくなる。毎日気力と体力を削って仕事をするが、なかなか思うようにいかない。いつも自分に何かが不足しているような気がして、そのために同僚の信頼を得られていない気がする。給与や職場環境も含め待遇も良いとは言えず、時々何のために働いているのだろうかと思うことも少なくない。

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25歳、一般的にもキャリアに結婚に悩む年齢だろう。これからどうするか、悩みながらも、長い間憧れていた仕事だ。手放せないなとも感じる。ただこの仕事を続けていて、金銭的に豊かな生活を手に入れることは難しい。だからこそ、1週間しっかり働いて、週末はただ現実を忘れる。月曜日、また頑張るために、憧れの生活に少しでも近づくように、しっかり憧れの世界に浸って、また頑張る。働くために、映画を観る。いつまで若いと自認してよいかわからないが、もっと大人になって、生活の落としどころを見つけた頃に、ふとこの不安で不安定な生活を懐かしむのだと思う。そして、その時間がもう戻ってこないことにも気づいた頃には、何かの映画を観た後に想像していた自分であったらいいなと思う。