私はいわゆるあがり症なのだと思う。面接やプレゼンで緊張するのはもちろんだが、初めて行く美容院やデパコスのカウンターでも、体がガチガチになるほど力が入ってしまう。ものすごく緊張しやすい体質だ。
◎ ◎
そんな私だが、高校3年生の時に英検の二次面接を受けた。もちろんあがり症の私は、英語での面接に緊張しなわけがなかった。緊張しすぎて面接で何を話したのかをまったく思い出せないくらいガチガチだった。
今振り返っても、「なんで合格できたのだろう……」と思う。しかし、試験前に模擬面接を手伝ってくれた友人たちからは、「Aちゃん、いつもの日本語の模擬面接より緊張してないように見える」と言われた。私はそれが不思議で仕方なかった。私としては、英語での面接のほうが緊張していたと、自分で感じていたからだ。
なぜ周りから見ると英語での面接のほうがリラックスできているように見えるのか。17歳の時の謎は解けないまま、私は22歳を迎えた。それまでに、AO入試の面接や、バイトの面接や、進学先の大学で研究申請の面接など、たくさんの面接を受けてきた。22歳になっても相変わらずあがり症の私は、毎度毎度、胃を痛めながらなんとか乗り越えてきた。「我ながら見事なあがり症!」と自分でも思うほどだ。
◎ ◎
そんな私だが、来年海外旅行に行くことになった。あがり症で心配性な私は、入国審査を突破できるか不安で仕方なかった。そこで、一緒に住んでいるパートナーに模擬入国審査をしてもらうことにした。すると、22歳まで抱え続けた謎が解けることとなった。
「めっちゃネイティブやん!」と、緊張しながら英語を話した私にパートナーは言う。「お世辞はやめてよ……いま甘い判断とか求めてないから……」と切実に伝える私。「え?なんで?てか、シミュレーション必要ないくらい喋れてるやん」と続けるパートナー。
「いやいやいや!必要だから!シミュレーションってわかってるのに、いま心臓バクバクしてるし、頭の中真っ白になって単語とか文法どっかいっちゃってるし!」といかに自分が緊張しているかを力説する私。「そんな風に聞こえなかったよ?」と、パートナー本気な目を私に向ける。
◎ ◎
パートナー曰く、表情、とくに眉毛の動きが豊かなところや、言葉に詰まった時に「Hmmm……」とか「Well……」とかが出てくるところが、リラックスしている風に見えるとのことだった.
それを聞いた私は思い当たる節があった。私は小学生の頃、英会話を習っていた。その時の教材を思い出したのだ。物語調になっている英文を先生に続いて音読していたのだが、演劇部さながらの音読だった。その時のシチュエーションに合わせて、表情やジェスチャーも一緒に先生の真似をしていたのだ。
そして、スピーチする機会もままあった。あがり症な私のスピーチに、先生が、言葉に詰まったら「Hmmm……」や「Well……」と言って間をつなぐようにと指導してくれていた。その時の癖が、私の英会話に残っていた。これが、リラックスしているように見える理由だったのだ。
◎ ◎
私にとって英語とは、言葉と表情が一致する言語なのだ。言葉が適切な表情を呼び出しているのか、表情が適切な言葉を呼び出しているのかは不明だが、意識せずとも言葉と言葉に一致した表情がセットで表に出てくる。このことから、訓練すれば日本語も、その時の感情に左右されず、口から放たれる言葉にあった適切な表情を表に出せるようになるのではないかと私は思っている。
緊張しないための努力は今まで行ってきた。その結果が、「我ながら見事なあがり症!」という自己評価なのだ。これまでの努力を無駄と思いたくはないが……正直効果はなかった。しかし、謎が解けた今、私は努力の方向性を定めることができた。これを機に、緊張することは潔く諦め、いかに緊張を表に出さないかを努力していこうと思う。