今までの人生でいちばん緊張したこと、それは就職面接だ。

大学4年生の初夏。私は就職面接を受けた。私が働く世界は、一般的な会社に勤める業種ではない、少し特殊な業種だった。

そのため就職は大学4年に入ってからが本格的なスタートだ。就職活動や合同説明会に赴き、職場の雰囲気や特徴を知る。

1日完結型のインターンもあった。授業のない日や休日に参加すれば良いというものがほとんど。興味のある場所に申し込みをして、各々向かう。1日で終わるので、いくつも訪問できるところがメリットである。忙しい中見学をさせてもらい、働いたらどのように動くのかをざっくりとイメージするのが目的だ。

同級生たちは、大学3年になると就職活動が始まる。一斉解禁されると、企業の合同説明会やインターンへの参加で、興味のある企業をいくつか訪問していく。

授業の単位を取るよりも、エントリーシートを書くほうがよっぽど大切だと思うようになる時期でもある。1週間などある程度の期間、実際に会社に通い、仕事を学ぶというもの。通常業務の補助という形で参加するのがインターンである。

会社の雰囲気や、実際に社員が働いている状況や働き方を見られるので、自分が一員になれそうか判断するためのよい機会となる。

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私もいくつかインターンへ参加し、就職試験を受ける場所を定めていった。絞って選んだ先にエントリーシートを送る。私の場合は、エントリーする会社それぞれに独自のエントリーシートがあったので、それを使って必要事項を記入した。

そして迎えた当日。学校での面接対策や小論文対策などを思い出し、アドバイスとして言われたことを復唱する。住んでいる地域から遠い場所を就職先に選んだので、近くのホテルに前泊して当日の試験に臨んだ。

小論文は、過去の体験に基づいて価値観に結びついたことがテーマだった。

これまでの学生生活を振り返り、自分にとって身になった体験を記していく。半分くらい失敗したことも絡んでいる内容であったので、少し恥ずかしさも覚えながら綴っていった。指定された文字数に収まり、話の内容も筋が通っている小論文に仕上がったため、とても自信作と言える手応えを感じた。

次は面接だ。以前、面接の受け答えが全くできなかった経験がある。就職面接特有の雰囲気と緊張に飲み込まれてしまったことがあるので、今回はそれを出さないように心がけて臨んだ。

私は緊張すると冷や汗をかく傾向にある。空調によって火照っているのに冷たい体という不思議な現象が起きるので、緊張とともに体が震えだしてしまうのだ。

面接のときも、同じことが起きた。受け答えに頭を巡らせていると、体が震えた。答える口はガタガタと音が鳴るくらい震えており、上手に話せていたかは未だにわからない。思考が飛び散り、いくつもの箱を開けっ放しにしている状態に陥りやすい人でもある私。ただ、話の内容が逸れないように必死に筋道を立てて言葉をつないでいった。

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自分の番が終わり、試験会場を後にする。無事に終わったという安心感で、心にゆとりができた。ホッとしたのを最後に、私の記憶は終わっている。その後どのように過ごして家に帰ったかは覚えていない。

試験は無事合格。震える体を精一杯止めて、内容に一貫性をもたせた受け答えをするので精一杯だった面接を振り返り、安堵した。

緊張によって体が震えてしまうことは今でもある。しかし、就職試験の時ほどに震えて、どうにかしなければ、と思ったことはない。あのときが、人生でいちばん緊張した瞬間だ。

結果的に成功体験として私の中に刻まれたことで、その後の面接や面談を乗り越えられているのかもしれない。良き体験として昇華できているのだろう。

緊張の先にあったものは、緊張している中でも冷静に、1つずつ意識をして取り組んでいけば必ず成果が見えるということ。

成功体験として得た私の就職試験は、人生経験の大きなページとして刻まれている。

もう一度経験したいかと聞かれると、答えは「NO」だ。とはいえ、貴重な経験をしたとも思っている。頑張った自分。大きな糧を手に入れたはずだ。