2022年の冬のはじめ、姉と友人のCと3人でいつものようにおしゃべりをしていた。それぞれ会社での悩みが積もりに積もって限界だと口々にこぼしていた。
楽しみがなければ、年末まで駆け抜けられない!と、クリスマスイブから1泊2日でしっかり遊ぶことにした。
姉と私は双子、Cとは中学の同級生で、3人集まってよく遊んでいるが、泊まりで遊ぶのはこのときが初めてだった。

転職したてのC、体調を壊して年度末での退職を決めている私、会社で日々淡々と過ごしているが、転職先を探しまくっている姉。今年の自分たちを労う楽しみはモチベーションになる。

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おいしいものを食べて、そのあとは予約したホテルに泊まる。それ以外はあまり決めない。もともと集まってから気楽に思いつきで行動することが多い。

集合場所は福岡、博多。
いよいよ当日になり、集まってから太宰府へ行きたい、となった。
早速、移動。
太宰府天満宮を観光し、3人お揃いでお守りを買った。
退職の日がだんだん近づいて不安だった私にはお守りが中々心強かった。転職先はまだ決めていない。これから明るい未来が来るよう願った。

◎          ◎

クリスマスらしさが少し弱い滑り出しだが、これもまた楽しい。
勢いづいた私達はどんどん歩き、近くの竈門神社へも行った。近くと言っても歩くとなるとちょっとした気合いがいる。距離は2キロだが、上り坂が続く。

その日は前日の雪が残っていてちょっと気を抜くと滑るので、慎重に、お喋りしながら歩いた。ひとりだとバスを使うような距離でも、3人でいるとお喋りしながらどこまででも歩けてしまう。この時間が私はとても好きだ。
同じコースを歩いている人達はほとんどハイキング向きの格好で、中にはトレッキングポールを握りしめている人もいた。安全性は問題なかったが、私達だけが、街ブラするような格好で少し可笑しかった。

竈門神社にたどり着きお参りする。足に疲れが出始めているが、清々しい。ここでも、お守りや鈴を買う。
再び歩いて太宰府天満宮へ。
さすがに寒空の下ばかりは堪えるので、梅ヶ枝餅がいただけるカフェに入って温まった。
「毎日が今日みたいに楽しかったら最高なのに」と言いながら、普段の愚痴っぽさが薄らいでいる気がした。

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博多に戻るとディナーの予約時間に調度良い頃合いになっていた。Cが選んでくれたレストランは、イタリアンのコース料理を温かい色の明かりの店内で楽しめるところだった。ここに来てクリスマス感が急上昇。

店員さんの薦めで、オレンジワインを初めて飲んだ。オレンジというより、澄んだ金色のような液体がグラスにさらりと注がれて輝いている。それを各々感想を言いながら飲む。大人になれているのかもと嬉しく思う。ちょっとカッコつけて書いたが、実際は「おいしい」「わあ」とか、はしゃぎながらパスタやお肉を食べている時間が大半だった。

ふと「もう、会って15年ぐらい経ってない?やばいね」と3人とも目を丸くする。
初めて会った頃の私達は中学1年生だった。時の流れは早い。改めて数えると会って15年だ。こんなに友達でいられると思っていなかったかもしれない。

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満腹で幸せな気分に浸りながら予約したホテルへ歩いた。
「いつでも今日みたいに明るく振る舞えば、会社での人間関係ももっと良くなるかな?」と私がきくと、Cが「みんなにここまで自分を出せないよ」と言った。Cは、好きなことや楽しいことをあまり親しくない人に話して、雑に共感されるのはなんか違うな、と思うそうだ。
自分の気持ちを自分で上手に守るのも大切なことかもしれない。

ホテルに着く前に、一定時間おきに噴水ショーが見られるところへ寄った。初めてくるところではなかったが、夜に来ることがなかったので、色とりどりのイルミネーションは新鮮だった。
歓声を上げながら噴水を楽しんだ。

ホテルに着いても、しゃべる、ダラダラする。全然気を遣う必要がない。

翌日もラーメンを食べた後にアフタヌーンティーに行って満腹の限界を超えたり、道を間違えてお目当てのイベントをラスト5分しか見られなかったり、トラブルにも大笑いしながら過ごした。

夕方が来て帰路に着く。
地元に帰れば、また仕事に悩まされたり、緊張や苦しさもあるだろうなとふと思う。けれど、この幸福感がしばらくは自分を守ってくれるだろうと感じた。