「ねえ!朝ごはん食べてる暇ないでしょ!学校早く行きなさい!!」
中高時代、お母さんにそんな風に怒られたことを鮮明に覚えている。
昔から夜更かし大好き、朝寝坊常習犯の私はどんなにギリギリに起きようが、髪の毛をセットする時間やらメイクをする時間よりも朝ごはんを優先させていた。
だってお腹空いてるんだもの、仕方がない。
朝ごはん食べないと元気出ないし。
◎ ◎
当時、まず朝起きたら、とりあえず朝ごはんのためにキッチンのある1Fに下りていた。
別に誰もコーヒーにこだわってないのに昔からなぜか家にあるコーヒーメーカーからコーヒーを注いで、トーストに好きなジャムを塗って。朝の情報番組の左上に出てくる「7:20」みたいな時刻の表示とにらめっこしながらデザートのヨーグルトを押し込んで。
食器を片付けて、慌てて2Fに上がって歯磨きやらなんやらを済ませて、ボサボサの髪のまま学校へ……。
これが私の中高時代の朝のルーティン。
いままでのエピソードをご覧いただいた通り、わりとギリギリを攻めて生きてきた(しかし学校では真面目キャラを演じていたため、友人にはあまり信じてもらえない……)。
大学は地元を出て、関東のおばあちゃんちに下宿していたが変わらないギリギリっぷりにおばあちゃんをひたすらハラハラさせた4年間だった。
◎ ◎
そんな私もなんとか大学を卒業し、めでたく社会人となり、一人暮らしをすることになった。
こんなギリギリ娘がちゃんと一人暮らしできるのか、そもそもちゃんと朝1人で起きて会社に行けるのか……?
そんな両親の心配とは裏腹にしっかりと私は「朝のルーティン〜余裕あるver.〜」にバージョンアップさせるという成長を遂げていた。
まず、朝起きたら冷蔵庫を開いて、お昼のお弁当のおかずを詰めて……。
コーヒーメーカーは残念ながら新居にはないのでインスタントのコーヒーの粉をふりふりしてお湯を注いで……。
トーストにピーナッツバター(社会人になってからハマった)を塗って、昨夜用意したヨーグルトを食べて……。
学生時代の時とは違って、ちゃんと朝ごはんを食べてからメイクする時間も髪の毛をセットする時間もとれるようになった。情報番組も時刻表示とにらめっこだけじゃなくて、ちゃんと内容までチェックできるようになった。ついでに時間がある時は今日の業務の予習なんかもしちゃったりした。
私、すごいじゃん!!なにもかも完璧な状態で出勤できてるじゃん!!やるじゃん!!私!!
◎ ◎
しかしそんなに人生は甘くなかった。
3年目の春、完璧だったはずの朝のルーティンに異変が起こった。
まず、朝ごはんを食べながら朝の情報番組を見れなくなった。
朝の情報番組を見るだけでこれが終わったら仕事だ……と憂鬱な気持ちになってしまうようになったのだ。
動画サイトが朝ごはんのお供になった。せめて朝は好きな動画を見て元気になろうと思ったのだ。
しかし状況は悪化する。
夏、朝ごはんが食べられなくなった。あんなに食べないと気が済まなかったのに。学生時代の私に言ったら驚くだろう。
いくら食欲がないとはいえ、なんか食べないと!!無理やりゼリー飲料を詰め込んでやり過ごす日々が続いた。
そして秋、ついに朝、布団から出られなくなった。仕事が嫌で嫌で、出社前、泣いてしまうようになった。
◎ ◎
ついに限界を迎えた私は休職する事になった。
そして現在。休職して2ヶ月がたった。私は一人暮らしをやめて、おばあちゃんちに戻ってきている。
ちゃんと布団から起き上がれるようになったし、朝ごはんも食べれるようになった。
朝起きたら、おばあちゃんにまずは挨拶。
紅茶のティーパックをカップに入れたらお湯を注いで、おばあちゃんおすすめのあんバターをトーストにかけていただいて。フルーツたっぷりのヨーグルトを食べながらおばあちゃんと談笑する。これが私の新しい朝のルーティンだ。
今はおばあちゃんに甘えながら、のんびりしているが、いずれ体調が落ち着いたら転職活動をするつもりだ。
出社前、朝ごはんを美味しく落ち着いて食べられる。そんな職場に次は出会えるよう、しばらく今は好きなことをしながらゆっくり休みたい。