「Aちゃん、大丈夫……?何かあったん……?おばあちゃん心配です」。

急に祖母からこんなLINEが飛んできた。私には、全く心当たりがない。

「最後に私から送ったメッセージって何だったっけ……?」と思い、少し上にスクロールする。私が最後に送ったメッセージは、3日前。いつもと変わらない近況報告の文章と、撮りたてほやほやの振袖の写真だった。

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私は高校卒業と同時に地元を離れて生活することになった。そして、約2年が経過した、2021年1月。私は地元の成人式に出席するはずだった……。しかし、コロナ禍で式は延期に。家族とも話し合い、時期が時期だけに、帰省もやめておこう……という話でまとまった。

「振り袖姿だけでも見たい」という、周囲からの要望で、慣れない土地で振袖写真を撮ってもらうことにした。 

撮影自体はスムーズに進んだ。慣れないことで不安だったが、写真館のスタッフさんがサポートしてくれ、特に困ることもなく撮影終了。アルバムが届くまでに時間がかかると言われたが、撮影データはその日のうちに貰えた。

すぐさま、両親や祖母にLINEで共有した。母からは、「赤い振袖似合ってるよ。やっぱり生で見たかったなぁ……」と、その日のうちに返事が来ていた。祖母からは既読がついたものの返事が来なかった。

しかし、祖母の返事が遅いのはいつものことなので気に留めていなかった。「あんたらぁとお話ししたいから、おばあちゃんスマホがんばってみるわぁ」と言い、スマホを使い始めた祖母。返信には時間がかかるが、いつも2~3日以内には返信がきていた。

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そして、振袖写真を送って3日後。ようやく来た返信が、「Aちゃん、大丈夫……?何かあったん……?おばあちゃん心配です」だったのだ。

私は頭の中に「?」が浮かんだ。色々考えていると、祖母からまたメッセージが届いた。「そんなに、太ってしもうて……」と。「え!?」と、動揺しているとさらにメッセージが……。「言おうか悩んだんじゃけど、心配じゃったから」と。 

祖母からのLINEを見て、「私が太った……?」と動揺した。「確かに、ちょっと顔が丸くなったかも……」とは思っていたけれど、「写真館の写真はフィルターとかかけてないから、こんなもんかな?」と思っていた。しかし、コロナ禍が始まって以降あっていなかった祖母の目には、かなり太って見えていたようだ。

「そういえば、最後に体重計に乗ったのいつだっけ……?」と、つぶやきながら、私は焦って体重計に飛び乗った。

【52kg】と、表示される体重計。「あれ?設定がおかしいのかな……?」と、再起動する私。そして、もう1度乗る。やっぱり、【52kg】と表示される体重計。「最後に体重計に乗った時は、45kgだったのに!?」と、驚いた。

あまりの動揺に、「コロナ禍で地球の重力変わったのかな……?」なんて、あほらしい言葉が自分の口から放たれていた。

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後日、母から聞いた話だが、祖母はスマホが使い慣れないから返信が遅かったわけではなく、私を傷つけないか色々考えていたら返信が遅くなったとのことだった。

でも、そんな祖母のおかげで私はコロナ禍太りに気づくことができたし、ダイエットを始めることができた。誰かに直接会うこともなく、毎日ZOOMをつないでいるだけでは、自分の体型の変化に気づけないものだと、この時、痛感した。

時は流れて2023年11月。私はそんな重要な教訓を忘れ、またしても体重計にも乗らずに過ごしていた。そして、パスポートの写真を撮りに行き、またしても「あれ?ちょっと丸くない?フィルターかかってないからかな?」と、口にしていたのであった……。