実家が貧乏だったことと、両親の教育方針からスマホを持ち始めたのは高校3年の1月だった。
正直スマホにいい印象は持っていなかった。
せっかくの昼休みなのに友達はみなスマホに夢中。
最後までスマホを持っていなかった私はいつも蚊帳の外だったから。
やっと買ってもらった頃には周りは大学受験の真っただ中。
必死に勉強する友達にSNSの遊び方を聞くのは申し訳なかったし、それまでガラケーもあまり使いこなしていなかったので、あの時はほぼ使っていないようなものだった。
あのままでいられたら、きっと良かったんだと思う。
◎ ◎
社会人になり一人暮らしを始めた時、私はスマホに依存した。
今まで家に帰れば家族が話し相手になってくれたが、一人暮らしはそうはいかない。
ツイッター、インスタ、フェイスブック、ユーチューブ、ティーバー……。
一人でいるのが寂しくて、無音の部屋が辛くて、スマホが唯一の同居人だった。
休日には友人に会ったり家事をしたりして極力スマホから離れようと努力はしていた。
でも部屋に戻り一人になった時、一通り家事を終えてすることがなくなってしまった時、どうしてもスマホに手が伸びてしまった。
結婚すれば変わると思っていたが、結婚した2020年にはコロナが流行り外出自粛でさらにスクリーンタイムが増えた。
夫は夜勤がある仕事で出勤すると丸1日帰宅しないので、一人暮らしのような状態も変わらなかった。
その後夫の転勤に帯同したことで、親も友人もいない土地に平日はひとりぼっち。
スマホで一通りSNSを見たら次はテレビでユーチューブを見てまたスマホに戻り……。
妊娠しつわりが酷かった時以外は常に肌身離さず画面を見ていた。
産後娘に時間を使う分スマホ時間は減ったものの、ずるずるとスマホ依存を続け6年がたってしまった。
◎ ◎
「実は妊娠したんだ!今の仕事は子育てしながらだと続けられないから転職しようと思ってる」
この前久しぶりに電話した友人からの妊娠報告に喜んだのもつかの間。
「医療事務の資格取ったんだよね」
驚きだった。
彼女はいわゆる社畜でSNSを見ている限り土日も派手に遊んでいた。
それなのに産後のために資格を取っていたなんて……。
同じ6年間を過ごしていたはずなのに私は何をしていたんだろう。
通話を終えて手に持った画面を眺める。
暗転した画面に6年分年をとったのに、何も得られていない女が映る。
人生であんなに劣等感を感じたことはなかった。
自分を変えたかった。
ずっとずっとそう思っていたけどできなかった。
◎ ◎
変わるなら今しかないと感じた。
娘を寝かしつけた後の夜1時間ほど、簿記の勉強をしている。
普段1ページに数文字しかない絵本しか読まなかったことに加え、スマホのいじりすぎでほぼ死んでいたような脳で勉強をするのは頭が痺れる感じがする。
正直勉強なので楽しくはないし、SNSを見ている時に比べると時空が狂ったように時間の進みが遅いけれど。
この6年間を取り返すべく、よなよな参考書と向き合っている。