「離婚しないの?」という言葉が、何度も喉元まで出てきたことがある。もしかしたら、実際に口に出したこともあったのかもしれない。母は今も、父と「夫婦」の関係でいる。
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父と母は13歳差の年の差夫婦だ。私が生まれたとき、父はすでに40歳を超えていた。今時年の差夫婦なんていっぱいいるし、厳密に言えば色々リスクはあるが、何歳で子どもを持つかなんて自由だ。でも、私が小学生のときに通っていたスポーツクラブの迎えに父が来たときに、同級生に「今日のお迎えはおじいちゃんなんだね」と言われるのは恥ずかしかった。
悪い父親ではなかった。暴力暴言、モラハラ発言はないし、休みの日には遊びに連れて行ってくれた思い出もある。朝早くに会社に行き、夜20時前に帰ってくる。日中の家のことや学校行事なんかは専ら母がやっていたが、まあ、時代的にも普通だったように思う。小学生までは、私も別に父のことが嫌いではなかった。
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中学生になってから、家を居心地悪く感じるようになった。最初は「思春期だしな」と自分でも思っていたけど、この頃から母が父の愚痴を私に言うようになったからだと、今振り返れば思う。
父の気の利かなさ、デリカシーの無い発言、計画性の無さ、頼りなさ。私が生まれる前からずっと苦労してきたのだと、母は言う。私が中学生になったから、そういうことを言ってもいいと思ったのか。それとも、たまたま今の時期になって、限界が来て気持ちが溢れてしまったのか。もう中学生だけど、たかだか中学生だ。小学7年生だ。まだ「はいはいそうですか、お二人でやってください」と流せる歳ではない。
母が父のことで毎晩のように泣いていたら、なおさらである。それは、私が社会人になってからも続いた。「もう離婚する」「もう決めたから」と泣く母は、まだ父といる。
結婚したことのない私にはわからない。え、なんで離婚しないの?そんなに苦しくて、結婚したままでいる必要があるの?子どもが小さいうちは、子どものため、経済的に難しいなどという理由があるのかなと想像する。でも私の家族は、一番年下の私で23歳の社会人だ。もう子どものことはいいだろう。父は今年仕事を退職するし、母は父の扶養を抜け出せるくらい稼いでいる。子どもの前でまぶたを泣き腫らすほどにつらいのに、一緒にいる理由とは何なのだろう。
それに、離婚できない理由によく「子どものため」と聞くけど、中学生のとき、父親の愚痴を言いながら泣く母を目の前で見ているのは、私はかなりつらかった。父と暮らせなくてもいいから、母がつらくないほうが私もよかったのに。
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そうは言っても、経験のない未知の世界だ。私には想像できない、「つらいから離婚!」と言えない複雑な事情が色々とあるのだろう。
私の周りにも、夫の愚痴が絶えない「妻」となった女の人がたくさんいる。私と関わりのある彼女らは、大抵母世代である。今と時代が違うから、「なんで結婚したの?」とは聞かない。でも、「なんで離婚しないの?」とは聞きたい気持ちでいっぱいだ。
それは、自分に経験がないからこそ、書類上の「夫婦」という関係を終わらせることに、なぜそんなにもためらいがあるのかという好奇心である。苦しんでまでためらう「離婚」ってなんなの?私はその正体が知りたい。