ある2つの手紙をおまもりにしている。どちらも中学校の卒業式で貰ったものである。担任の先生から貰った手紙、よく一緒に笑い合っていた友人から貰った手紙である。

私は中学時代、色々なことに挑戦した。勉強と部活動に熱心に取り組んだことに加え、生徒会の所属や、合唱コンクールで指揮者の担当などをした。日々の生活はもちろん、行事があるごとに一生懸命だった。

こうして振り返ってみると、どうしてあんなに頑張ることができたのか不思議である。一見私は充実した学校生活を送っていたようにみえる。ただ、今だから言えることだが、いつも心から楽しむことができなかった。なぜなら、本当に自分に自信がなかったからだ。

今も自信がないかもしれないが、当時よりは自信を持って生活していると断言できる。中学校の頃は、色々なことに挑戦したり、努力を怠らないことで不安を解消するようにしていた。自分の気持ちよりも周りに気を遣いすぎていたため、心の中は完全に自分を見失っていた。

◎          ◎

そんな私が尊敬し、頼りにしていたのは担任の先生である。誰よりも明るく、元気いっぱいの太陽のような先生だった。笑顔が絶えず、私達生徒に贈る言葉はいつもポジティブすぎるほどだった。

卒業式で先生から貰った手紙は、ものすごい長文だった。私の良いところや頑張りをびっしり書いてくれていて、読んでいる最中に涙があふれた。嬉しくて何度も何度も読み返した。いつも自分に自信がなかったが、初めて3年間の自分を認めることができた瞬間だった。

読んだ時のことを鮮明に覚えている。自分のことなど誰も見てくれていないと思っていたが、ちゃんと見届けてくれていた人がいたんだと嬉しかった。感謝の気持ちでいっぱいになり、先生のようにいつも笑顔で明るくいたいと決めた。

辛いことがあった時、挑戦するか迷った時、この手紙を読むと自然と勇気が湧いてくる。心も楽になる。高校でも、先生の言葉を胸に勉強も部活動も頑張った。沢山の素敵な人達と出会えたこと、少しずつ自分に自信が持てるようになったことで毎日が楽しくなった。

そしてもう1つ、おまもりにしている手紙がある。小学校から仲が良かった友人がくれたものだ。人に気を遣いすぎてしまう私だったが、その子といる時は心の底から笑っていた。一緒にいるだけで些細なことでも面白く、話が絶えることはなかった。

その子とはふざけ合える関係であると同時に、一緒に頑張り続けることができる仲間でもあった。テスト前には沢山一緒に勉強した。合唱コンクールでは、私が指揮者、友人が伴奏者となり練習を重ねた。惜しくも私たちのクラスは金賞を取ることができなかったが、私が最優秀指揮者賞を貰えた時、一番に喜んでくれた。

そんな友人とは高校から遠く離れてしまった。卒業式の日に貰った手紙には、共にした思い出が言葉として詰まっていて感動した。「何かあったら気軽にいつでも連絡して」という言葉は今でも励みになっている。卒業後も頻繁に連絡を取っているが、話の内容はほとんど笑い話である。そんな関係だからこそ、真面目な内容が書かれている手紙は私にとって大切で、おまもりとなっている。

手紙を読むと、改めて最高の友人を持つことができて幸せだと感じるし、この出会いに感謝してもしきれなくなる。

◎          ◎

先日成人式があり、帰省した。久しぶりに同級生達と会って色々な話をした。前よりも自分に自信が持てるようになった今だからこそ、当時以上に皆といる時間が楽しかった。

手紙をくれた友人とも会うことができた。相変わらず話も笑いも絶えず、成人式後の数日間はお腹が筋肉痛になるほどだった。同窓会では先生と会うこともできた。先生の笑った顔は全く変わっておらず安心した。私が先生からの手紙で救われたことを話すと、温かい表情を浮かべていた。

何でもデジタル化している現代だからこそ、やはり手紙には深みを感じる。先生や友人の字を見るたびに、心を込めて書いてくれたことがわかる。2人の人柄のようにまっすぐで綺麗な字だからだ。

これから先の人生、想像以上に大変なことがあるかもしれない。私は大学2年生で、将来の不安も少しある。そんな時に支えてくれるのはこの手紙だと思う。今までも、これからも。それぞれ違う道を歩んでいるからこそ、青春時代を支えてくれた先生や共に過ごした友人からの手紙には思い入れがあるのかもしれない。

成人式後はしばらく寂しかったが、また会える日を楽しみに、手紙を励みに明るく生きていきたい。そして、私も常に誰かの励みになるような言葉をかけていこうと思う。