既読にすることは最低限の思いやりである。
そう思っている私は、メッセージが届いたらすぐに返信をするタイプ。
そんな価値観が似ている人でないと関係を続けるのは難しいと悟った。
連絡を取っている途中に未読放置され、この人の中で私はそれほどの立ち位置なんだと察したことがあるからだ。
自分が必要な時だけ連絡してくる人がいた。
以前勤めていた会社の同期とは、好きなことが似ていてすぐに仲良くなった。休日も予定が合えば出かけたし、退職してから数年経ってもたまに会う仲だった。
◎ ◎
ある時、近々会いたいとメッセージが届いた。内容は恋愛がうまくいっていないから相談したいとのこと。すぐに空いている日程を送って予定を組んだ。会ってみるとあまり元気がなく、それでも数時間話して少し前を向けたらしい様子だった。
会ってから数日が経ち、また連絡が来た。今日会えないか、と。
突然すぎだと思ったが心配で、家族と相談しなんとか時間を作ってまたその子の話を聞いた。
それから3ヶ月ほど経っただろうか、その子から何のメッセージも届かないことに気が付いた。どうしてるかなと連絡を入れたら、意外とケロッとした様子で返信が来た。
あれ、と若干の違和感を抱いた。
私がその子の立場なら、あれだけ相談したのだもの、「元気になったよ」と数日のうちに連絡を入れるだろう。会う時間以外にも何度もメッセージのやり取りをしていたのだから。
いや、はたまた経過報告なんて私が業務的すぎるのか。
まあいいかと、恋愛以外のことも会って話したいなと思い、また会おうと私から誘った。
◎ ◎
返信がないまま数日が過ぎた。
ここから返信が途切れ途切れになったのだ。空いている日を教えてもらい、その日ならこの時間が空いていると即レスしても、音沙汰がないまま2日が過ぎる。その2日間、何度かトーク画面を開いたけれどずっと未読。
やっと返信が来たかと思えばその時間は無理なの、と。
こちらが日程を確保して待っていたその間に別の用事を入れたのか。ショックだった。
この状況を俯瞰して、「あなたと話す必要はないの」という意思表示なのかもと冷静に分析している自分がいた。
せめて既読にしてくれていたら、何か調整中なのかもと待つことが出来た。
でもそうじゃなさそう。あの時、他に相談できる人がいなくて、呼んだら来そうな私を使ったのだろう。ああそうか。すぐに連絡がつく私は、彼女にとって都合が良かったのだ。だから自分の用事が済んだら、もうどうでも良くなったんだ。そういう面もあったのねと知った。
◎ ◎
結局そんな相手に自分の大事な時間を使うのが惜しくなって、その予定はキャンセルさせて欲しいと伝えた。
この連絡に1時間ほどで了解の返信が来た時は、さすがにムッとした。
その時間すらもったいない。たまたま暇だったんだと思うことにした。
それでも気が晴れないので、この子仕事ではどうしてるのかしら、気まぐれは良くないわよ、なんて考えてどうにか気持ちを落ち着けた。
彼女からはそれ以来連絡が来ていないし、私からすることもない。
大人だもの。みんな何かしら日々の波の中で生きているのだ。
連絡の頻度が相手の私への気持ちとイコールでないことは分かっている。
とは言っても、なかなか連絡が返ってこないと切なくなる。
ほんとはメッセージに気付いてるよねと悲しくなる。
◎ ◎
だからこそ、なかなかスマホを開けなかった時にはメッセージに「遅くなってごめんね」と添える。
忙しい時に急ぎでないメッセージが届いたら、放置せずに「後で見るね」と伝える。
誠意を持って対応するというと大袈裟だが、連絡をくれてありがとうという気持ちを伝えたいことは確か。
ガラケー時代は相手がメールに気付いているか見えなかった。
でも今のメッセージツールはトーク画面を開くだけで「あなたのこと気が付いているよ」と伝えることが出来る。
既読にする。一言だけでも返信をする。
その少しの手間こそが、連絡をくれた相手に対しての私の思いやりなのだ。