特技は何ですか?という質問が苦手だ。特技など無い。

強いて言えば、足を高く振り上げることですかね。膝で自分の顔面を蹴ったこともあります、ははっ(笑)。

逆に出来ないことは何ですか?という質問も苦手かもしれない。

そんなこと聞かれたこともないけど、私は恐らく答えられない。医療行為とか弁護とか、そういうスペシャリティなことは抜きにして、一般的な趣味に挙げられるようなことは一通り出来ると思う。

自分を一言で表すなら器用貧乏だ。この言葉を初めて知ったとき「私以上に器用貧乏という言葉がピッタリの人間はおるんか」と思った。1000人の中でも器用貧乏の代表を張れるくらいだと思う。

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小学校と中学校でバレーを習っていたので、まずバレーはできる。バドミントンも好きだ。野球はルールが分からないので判断しようがないが、体育のときの野球の授業ではフライのボールが取れた。中学のときの体力テストは3年連続A判定だった。
文化祭では劇で主役を演じた。先生に「役者目指しなよ」と言われたのを、ほんの一時期本気にしていた。

8年間、書道を習っていたので、字はそれなりに自信がある。高校の書道部の書道パフォーマンスではダンスの振り付けを考えて、踊った。リズム感はある方だと思う。
趣味は絵を描くことで、特に女性の横顔は上手く描ける。最近は刺繍にもハマっている。先日、ユニクロのTシャツにトゥイーティーを繍った。
カラオケも好きで、よく1人カラオケに行く。採点は大体92点。可もなく不可もなく。
学生のときからお菓子作りも好きだった。今もたまに作るが、大人になってからはやはり料理のほうが力が入る。自分で作るナポリタンが一番美味しいと思う。

出来ることが多い分、好きなことが多い。自分は恵まれているとつくづく思うが、たまに、無性に寂しさと焦りを覚える。
私にはプロフェッショナルなことが何一つ無い。ある程度のことが平均的にできるため、それ以上を目指すこともない。良く言っても悪く言っても、普通。

ずっと、「特技は書道です」と言ってきていたが、高校卒業と同時に触れる機会がなくなり、今では拭いきれないブランクがある。特技と言うには乏しい。

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社会人になって、私が出来ていたことのほとんどが、社会では役に立たないことを知った。器用貧乏であるが故に、営業も事務も接客もそれなりにこなせたが、知らず知らずのうちに無理を重ねていて、身体を壊した。

ある程度のことが出来る器用貧乏は、自分と向き合うということが出来なかった。

物事においては器用だと思う。でも私は人に対しては多分めちゃくちゃ不器用で、人の気持ちが分からない。自分においては尚更。
私は何がしたいのか。どうなりたいのか。料理はそれなりに作れるのに、お腹も空いているのに、自分が一体何を食べたいのか分からない。だからナポリタン程度で済ませてしまって、それ以上のパスタを作る気にはならない。

よく、「何でも出来るね」と言われる。でも同じくらい「変だね」と言われる。

私は傍から見ても普通とは異質らしく、その言葉がとても嬉しいのだ。"普通"とはかけ離れた言葉で、私に色を付けてくれるような気がして。