高校生の時、唯一無二の親友に出会った。
同じ中学の親友とは別の高校に進学し、全くと言っていいほど知り合いがいなかった私が、高校で初めて心を開いたのが彼女だった。
仲良くなったきっかけは、同じクラス、同じ部活動に所属していたこと。自然と一緒に過ごす時間が増え、気づけば、移動教室も、休憩時間も、下校も、常に彼女が隣にいることが当たり前になっていた。

彼女は、とても自由で、風みたいに掴みどころのない人だった。
人見知りで緊張しいで臆病な私とは正反対で、不安がる私の手を「大丈夫だって!」と言いながら、引っ張ってくれた。彼女が見ている世界は、私なんかよりも、もっとずっと広くて、彼女と過ごす時間は、いつもワクワクドキドキ、楽しい気持ちでいっぱいだった。
時には、正反対だからこそ、衝突してしまうこともあったけれど、すぐにお互い耐えきれなくなってしまって、2人揃って号泣しながら仲直りもした。
私の高校生活のほとんどは、彼女と共に過ごした記憶だ。
私にとって、それくらい彼女の存在は大きくて、大切なものだった。

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大学生になり進学先が別れた後も、頻繁に電話をしたり、長期休暇にはお互いの家に遊びに行ったりして、変わらず仲良くしていた。

しかし、それはあまりにも突然の出来事だった。

彼女の連絡先が全て消え、音信不通になってしまったのだ。
LINEも、電話番号も、メールアドレスも、全て繋がらない。
直前までしていたLINEのやりとりで、何か怒らせてしまったのだろうか、彼女の気にさわることを言ってしまったのだろうか。
そんなことを思いながら共通の知人に確認してみると、みんな声を揃えて、彼女が消えた、と言うのである。

つまり、私だけが、ブロックや着信拒否をされているわけではない。
ふらっと突然、彼女自身がみんなの前から消えていったのだ。

何も言わずに関係を失くしてしまえるほど、私の存在は彼女にとって小さいものだったのか、というショックと同時に、正直、彼女らしいな、とも感じた。
誰にも縛られずに、自分自身を信じて行動する。
それこそ、私が大好きで憧れていた、彼女の姿だったのだから。
どこまでいっても彼女は彼女なんだな、と寂しいながらに安堵の気持ちもあった。
それでもやはり、最後にしたくはないけれど、最後になってしまうのであれば、「さようなら。今までありがとう。大好きだよ」くらい、伝えさせてくれてもよかったのに。
自由な彼女は、いつも私を振り回す。

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彼女が音信不通になってから、もう5年近く経つ。
今でもたまに、スマホに残したままの繋がらない電話番号に発信してみたら、彼女が出るんじゃないかと期待する時がある。
当然、いくら発信してみても、スマホから流れるのは、「この電話番号は現在使われておりません」という無慈悲なメッセージだけだが。

自由な彼女のことだから、いつかひょこっと顔を出してくれるかもしれない。
まだまだ先は長いのだから、彼女のように、自由気ままに待ってみようと思う。