「少し関係性のある相手」が苦手だ。何を話していいかわからなくなる。
初対面の相手なら案外話せるようになってきた。出身地、仕事や学生時代にしてきたこと、趣味や休みの日の過ごし方、家族の話。関係が浅いうちは、話題が豊富にあるのだ。

問題は、それらの話題は出つくした、かつすごく仲がいいわけではない相手の場合だ。ぱっと話題が思いついてくれない。沈黙が怖い。

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だからわたしは、雑談タイムがありそうな予定の前には、あらかじめ話題を考えておく。昨日あったこの話をしよう、あの人はこれが好きと言っていたから最近はどうなのか聞いてみよう、と。当日、話題に困ったときに候補にできるストックを貯めておくのだ。この準備を始めたのは案外はやく、小学生の頃かもしれない。 

5年生の頃、友人Eはわたしの憧れだった。さっぱりとした性格のEは多くの同級生と仲がよかったし、「ちゃん」付けで呼ばれることが多いわたしを初めて呼び捨てで呼んでくれた。それくらい積極的に距離を縮めてくれる子で、わたしもEのようになりたかった。

ある朝Eと合流したとき、彼女が言ったことばが意外で、今でも覚えている。

「今日は〇〇(筆者)と何話そうかなって考えてた」

話すのがうまくていろんな人と仲がいいEが、朝わたしと会う前に、そんなことを考えてくれていたとは思わなかった。わたしが楽しく話せていたのは、話題を考えてくれていたおかげかもしれない。Eに友達が多いのは、相手への気遣いと思慮深さも理由のひとつなのかもしれない。

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その記憶から、憧れのEと同じように、わたしも話題のストックを始めたのだと思う。

試行錯誤しながら最近覚えたもうひとつのコツは、連想ゲームだ。話の中のキーワードや、ふと目にしたものから、自分の記憶や興味につなげて話を広げるのだ。とくに移動中や普段と違う場所にいるときに、この方法を使えることが多い。

遊んでいる子どもを見つけたら、そういえばこんな遊び流行ったよね、と小さい頃の記憶につなげてみる。弁当屋の前を通ったら、「学生の頃弁当屋でバイトしていたんだけど、あなたはなにかバイトしてた?」と聞いてみる。こんな話題でもいいのだろうかと不安になることもあるけれど、思いついたら言ってみようとできるだけ前のめりに考えるようにしている。

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そんなわたしにも、ストックしていた話題を忘れてしまうほど話がはずむ友人ができた。一応話すことを準備して行くが、会って話し始めると次から次に、あれ話そう、これ話したい、と湧き上がってくるのだ。

小さい頃から話すのが苦手と悩んできたわたしにも、そんな相手ができるなんて。人見知りを克服できたのかと思いきやそんなことはない。ふたりきりの時間に緊張する日も、うまく話せなくて落ち込む日もある。それでも、わたしにも気楽にお喋りできる相手がいるということがわたしを安心させてくれる。

憧れの人を真似して、少しずつ自分なりのコツをつかんで。まだまだ口下手な自分に悩みながらも、楽しい時間を過ごせることを願って、わたしは今日も話をする。