幼い頃からクラシックバレエを習い、小学生になると毎日バレエ団のスタジオに行くのが私の日課だった。バレエダンサーに憧れ、15年間クラシックバレエに没頭する日々を送った。

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高校に入学すると、クラシックバレエ以外のジャンルのダンスに出会った。その自由な表現や創造性に魅了され、高校時代はダンス漬けの日々を過ごした。踊ることが私の世界のすべてといっても過言ではなかった。またこの頃、母の影響で演劇、ミュージカル、歌舞伎などの舞台を観る機会が多く、舞台芸術全般にも興味をつようになっていた。

高校卒業後の進路も、舞踊、芸術に関することを学問としてさらに追究したいという思いで、大学受験も芸術分野の学部を志望した。

しかし、希望する大学への合格が叶わなかった。コロナ禍の感染拡大により高校3年生のダンスのステージがほぼなくなってしまったことによる不完全燃焼な状況と大学受験がうまくいかなかったことは、私にとって初めての挫折であり、自分の将来に大きな不安を抱えることになった。

その状況からなんとか気持ちを切り替え、続くコロナ禍のなか、私の浪人生活が始まった。予備校と自宅の往復が私のスケジュールのすべて。となり、そこにダンスが入り込む余地はなかった。

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その頃、大学で研究支援の仕事をしている母も、在宅で勤務する日が増えていた。自宅で夜遅くまでオンラインのミーティングや授業の補助をしていたため、私は初めて母の仕事を垣間見るようになった。

母が研究支援を担当している教授は心理学専攻の先生だった。先生の講義が聞こえてくることがあったし、学生が熱心に講義を受けている様子や、ゼミで様々な活動を自主的にしていることを知った。 

私が想像していた以上に大学生にできることは沢山あって、主体的に学びに行けば行った分だけ自分の身になる場所であると感じた。大学生の活動を間近に感じたことで、大学というものに抱いていたイメージが大きく変わり、大学で学ぶことの意味をもう一度考え直す機会になった。

また、大学には高校時代にはない様々な分野の学問があること、その奥深さと広がる世界の大きさを感じた。それまで芸術分野にしか興味がなかった私にとっては、初めて視野が広がった瞬間だったように思う。

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大学ではこれまでとは違う分野の学問を学び、さらに視野を広げてみたいと思うようになった。ダンスはまた大学とは違うフィールドで活動することで、より多くの学びを得られるとともに、大学時代をより充実させることができるのではないかと思うようにもなった。

そして、志望の学部を「心理学」に決めた。そこからの受験勉強は、新しい学問を学ぶためという目標が増え、大学に入学するため、というものからその位置づけが変わった。

大学で何を学びたいかを明確にすることで、受験への取り組み方が大きく変わることも体験した。そして希望の大学というわけにはいかなかったが、希望する学部に入学することができた。

大学では、さまざまな観点から心理学を学んでいる。心理学から派生した、コミュニケーションやメディア、情報デザインの分野への興味も日々大きくなっている。

また、大好きなダンスも大学で再開することができた。高校生の頃には考えられなかった規模での公演を作り上げる経験ができている。踊ることだけではなく、企画や運営など、多くの学びをも得ている。今、充実した日々を送ることができていると感じる時、私の視野を広げてくれたすべての経験、関わってくださったすべての人に感謝の気持ちでいっぱいになる。