小学5年生の時、同性の女の子に初恋をした。

彼女は目がぱっちりとした二重で、毎日ブランド物のかわいい服を着ているのが特徴的だった。目は一重で、いつも母が選んだ服を着ていた私にとって、彼女は憧れの対象だった。彼女とはクラスが一緒になったのをきっかけに仲良くなり、気づけば「親友」になっていた。

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5年生の終わりに彼女とクラスが離れるのが嫌で、春休みに行ったディズニーシーでゴンドラに乗った時は、願いの橋で「来年も彼女と同じクラスになれますように」と願ったほどだった。願いの橋の効果は絶大で、6年生も彼女と同じクラスになった。時の流れは早く、小学校卒業の時期がやってくると、だんだんと彼女の存在の大きさを実感した。

違う中学校に入学することがわかっていたから、毎日学校から帰ってくると私は一人で泣いていた。ここまで人のことを想って泣いたのは初めてだった。自分の中でただの「親友」では言い表せない存在になっていた。「好き」なんだと思った。動揺した。でも、このことを彼女に伝えようとは思わなかった。今の関係が壊れるのが怖かったから。私の初恋は、自分の心の中で静かに消化した。

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中学校に入り、だんだんと彼女のことを考える時間は減り、私は部活に打ち込んだ。初心者だったけれど、他に興味のあることも特になかったので、小学校から仲の良かった子がバスケ部に入ると言うので便乗した。私を含め5人の新入生のうち1人だけがバスケ経験者で、1年生ながらスタメン入りをした。

その子は、プレーは上手なのにいつも先生に反抗していた。かっこいいと思った。「自分」をしっかり持っていて、自分の意見をはっきりと言えて。その子に惹かれ始めていたことに当時の私は気づいていなかった。私たちは打ち解けてからものすごいスピードで仲良くなり、1番の「親友」になった。放課後も、部活がない日も遊んだ。

3年生の秋、その子と初めて喧嘩をした。きっかけは、些細な事だったけれど、もう元の関係には戻れないと感じた。その時、小学生だったあの時と同じ気持ちが込み上げてきた。その子に対して特別な感情を抱いていることに気づいた瞬間だった。でもこの時もその子に伝えようとは思わなかった。絶対に伝えてはいけないとさえ思った。私はまた、気持ちを封印した。

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時は過ぎ、高校2年生の頃。Aとの出会いが私の考えを大きく変える。Aは、髪型がメンズカットのマッシュスタイルで上半身だけ見れば男の子と間違えるような見た目をしていたが、制服はスカートを履いていたので女の子なのだとわかった。共通の趣味である音楽を通して私たちは距離を縮めた。初めて一緒に行ったカラオケで、Aは自分について話し始めた。

自分がFTX(Female To X gender)であること、異性と同性のどちらとも付き合った過去、今の恋愛対象は同性であること、Aの話は何もかもが新鮮だった。私が今まで封印してきた気持ちを打ち明けられると思ったのはAが初めてだった。

私の経験を話し終えると、Aは「それがあなたらしさだよ」と優しく声をかけてくれた。今までの私が報われた気がして、私そのものを受け入れて認めてくれた気がして、嬉しかった。

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 Aとの出会いは、「型にはまらなくて良い」「自分らしく生きて良い」「1人じゃない」ということを教えてくれた。今の私にとってのAは「親友」であり、「恋人」でもある。「自分らしさ」とは何なのか毎日自問自答し続ける日々だけれど、自分の「好き」を大切に生きていこうと思う。

全ての人がLGBTQ+や同性愛に対してあたたかい心を持てる世の中になったらどれだけ生きやすいだろうと思う。誰かとの出会いがあなたにとっての支えとなりますように。