年上の女友達(以下、シロクマちゃん)と、よく昔話を振り返る。さかのぼること私が高校生の時、Twitter(現在のX)を介して、好きなアイドルが同じということで仲良くなった同郷のシロクマちゃん。

今の私くらいの年頃の時の彼女と出会ってから10年が経ったが、今でも憧れの可愛くて強くて優しいお姉さんだ。

シロクマちゃんの前では、私は今でも高校生気分で無邪気な気持ちで話すことができるほど、姉のように慕っている。

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そんなシロクマちゃんが何年か前に“東京駅の天井”の写真をSNSに投稿していた。八角形のドーム型になっている黄色い天井、角には8羽の鳥の浮き彫り細工が施されている。

なぜかあの写真がずっと頭の片隅から離れなかった私は「シロクマちゃん、あの“東京駅の天井”の写真の投稿見たよ!キレイやね!」と、無邪気に感想を伝えた。

すると、シロクマちゃんは「“東京駅の天井”、私のパワースポットなんよ」と話す。

その理由を尋ねると、今の私くらいの年頃の時にキャリアチェンジをしようとしていたシロクマちゃんは、九州から関東にある別の会社へ転職活動をしていたらしい。

「推し活のライブ遠征でたまたま通って“東京駅の天井”を見た次の日に、関東の会社の採用通知が来たんよ!やからパワースポットなんよね」と教えてくれた。

それからなんとなく、頭の片隅に“東京駅の天井”というワードが残っていたのだった。

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私の誕生日であるバレンタインデー。昨年の誕生日はラジオの仕事の出張で大阪から東京へと前泊した。

その際、大学時代から仲良くしてくれている友人に誕生日を祝ってもらえたので、ひとり寂しい誕生日とバレンタインデーを阻止してもらえてありがたかった。

その友人はきめ細やかな気配りができる素敵な子で、毎年お互いの誕生日を祝うのが恒例になっていたりするほど仲良くしてくれている。そんな彼女から「当日は丸の内広場で待ち合わせよう」という連絡が来た。

しばらくすると「丸の内広場よりも丸の内北口改札がこれから行くお店に近いかも」と再度連絡があり、丸の内広場から3分ほど歩いた丸の内北口改札に私は移動した。

すると頭上にはシロクマちゃんが以前SNSに投稿していた八角形のドーム型になっている黄色い天井、“東京駅の天井”があったのだ。

私は嬉しさのあまりに何枚も写真に収め、すぐさまスマホの待ち受け画面に設定した。

そして「これから何かが変わるかもしれない」というぼんやりとした予感がした。

まさかその時に見た“東京駅の天井”が、26歳の1年間を大きく変えることになるとは......。

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福岡で高校生だった頃、通学で西鉄大牟田線を利用していた。その沿線のとある駅には高層マンションが駅直結でそびえ立っている。

心のどこかで「駅直結のマンションって憧れるな」なんて思っていたあの頃の夢が10年ほど経った今、大阪で叶うとは......。

26歳の誕生日から2ヶ月後、たまたまご縁があって駅直結のマンションに引っ越すことができた。

その1ヶ月後、あぶら汗をかくほどの腹痛に襲われて深夜に緊急搬送。

子宮内膜症の卵巣チョコレート嚢胞が見つかった。

それから5ヶ月後、大好きだった祖母が逝去。

その翌月、亡くなった祖母の若い時に顔立ちや雰囲気がよく似た、母と同世代のマダムとお知り合いになった。

なんだかてんこ盛りな1年間が訪れたのだ。

誕生日であるバレンタインデーに出会った“東京駅の天井”は今もスマホの待ち受け画面にしている。

シロクマちゃんにとってのパワースポットは、私にとってのパワースポットにもなり、今も私を奮い立たせてくれる。

27歳になる今年はどんな1年になるのだろうか。26歳は激動の1年だったから、今年は穏やかな1年になってくれてもいいのだ、何かが変わる1年になっても悪くない。