最近、エッセイストとして致命的な欠点に気が付いた。恋愛が語れないのだ。皆に語って聞かせるほどの恋愛経験もなければ、恋愛武勇伝もなく、恋愛偏差値も高くない。23歳のときに初めて付き合った彼氏とは、同棲を始めて1年が経つ。

喧嘩という喧嘩もなく、倦怠期という倦怠期もなく順調である。が、順調すぎて波風がない。平和すぎるのだ。その平和が、お互いの努力と愛に基づくものだということは重々承知している。贅沢な悩みと人は言うのだろう。

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これを機に過去78作のエッセイのカテゴリを調べてみた。かがみよかがみでは、各エッセイを「恋愛」「家族」「コミュニケーション」「キャリア」「見た目」のようにカテゴライズする。過去78作、圧倒的に多かったのは、「その他」24作だった。「恋愛エッセイを書かせたら右に出る者はいない〇〇さん」「家族のほろりと良い話なら△△さん」などと二つ名があればエッセイストとしてかっこよい。しかし「その他のまよさん」では格好がつかない。私のエッセイはカテゴライズできないものが多すぎるのかもしれない。24作の「その他」の後に、13作ずつ「恋愛」と「コミュニケーション」が並び、その次に「家族」「キャリア」「見た目」が9作ずつ続く。

「意外とバランス良いし、なんだかんだ多いじゃん「恋愛」カテゴリ」と思う方もいらっしゃるかもしれない。

しかしこの13作は私の29年間を絞りに絞り切っての13作なのだ。おしゃべりな人間の29年間としては多いとは言えないだろう。仮に私のエッセイを全て読んでくださっているという奇特な方がいらっしゃったら、あなたは私の恋愛の全てを知っていると言っていい。親友コースである。

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さて、今回のテーマは「バレンタインの思い出」である。こんな風に恋愛カテゴリが苦手な私であるから、かがみよかがみから課されたエッセイテーマが、恋愛が色濃くでるであろうテーマであると、逃げ出したくなる。今回の「バレンタインの思い出」然り、いつぞやの「結婚と幸せ」然り、「最強デート記」然り。語りたくないからではない。語れることが少なすぎる、そんなささやかな恋愛経験に劣等感を抱いてしまうからだ。

では、恋愛以外の「バレンタインの思い出」はどうか。そうすると、意外と思い当たる節があった。以下は「友情のバレンタインの思い出」である。

中学3年生の頃、片思いをしていた。相手は隣のクラスの坊主の野球少年。お互い受験を頑張っていたので、メールで数学を教えてもらったり、たまの空き時間にキャッチボールしたりなど、健全なドキドキと中学生らしいときめきを募らせていた。しかし、なんといっても受験勉強に燃えていた私は、合格を勝ちとるまでストイックに学問に勤しんだ。

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結果、彼も私も第一志望校に合格した。バレンタインデーはとっくに過ぎていたが、ホワイトデーが近付いていた。奇しくも、卒業遠足に皆でディズニーランドに行くことが決まっていたため、私は決意した。ディズニーランドの魔法の力を借りて、ちょっと遅くなったけれど彼にチョコを渡そうと。親友の彼氏が彼と仲が良かったため、チョコはあまり好きでないことが判明。そこでチョコではなく、スティックチーズケーキを渡そうということになった。

ディズニーランド遠足の前日、親友の家に友人3人で泊まり込み、合宿を行った。前日に作ったスティックチーズケーキとラッピング材料を親友宅に持参する。100均で買いそろえた可愛いラッピング包装紙。親友3人でああでもない、こうでもないと言いながら、ラッピングする予定だった。その予定だった。

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計算外は親友のお母さんとお姉さんがその場にいたことだ。手先が器用でマメなお母さんは、私の恋心と明日の計画を耳にすると、「まよ私に任せて!」と腕まくり。私たちからスティックチーズケーキの塊とラッピング包装紙を奪うと、俄然包み始めたのだ。そして、お姉さん。「ちょっと味見していい?」と言って、スティックチーズケーキのかけらを食べたお姉さんは、口に入れた瞬間、「まよちゃん!なにこれ!めちゃうまなんだけど!」と叫び次々に口に入れ始めた。「お兄ちゃん、これめっちゃ美味しいよ」と別室にいるお兄さんに勧めにいく始末だった。

突然目の前で始まった自分の母と姉によるドタバタ劇に、親友は弾かれたように爆笑している。私と言えば、お姉さんからチーズケーキを守らなければ、と奪還を試みる。激闘の末の一時間後、器用なお母さんの手によって完璧な包装をされた、予定よりかなり少ないスティックチーズケーキが出来上がった。

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結果から言えば、ディズニーランド計画は失敗に終わった。スティックチーズケーキは渡すには渡せたが、告白する前に振られてしまったのだ。高校大学と彼とは疎遠になったが、成人式を機に2人で飲みにいくことがあった。その飲みの場で「あのチーズケーキ美味しかった?」と酒に任せて聞いてみると、にやりと笑っただけで彼は何も言ってくれなかった。こういうクールなところが中学生の私は好きだったのだな、と懐かしくなった。

そんなこんなで絞りだした「バレンタインの思い出」のエッセイである。今でも「バレンタイン」というと、実際に彼にチーズケーキを渡したあの瞬間より、母と姉の暴走を見て爆笑している親友の笑い声が思い起こされる。

つい先日そんな笑い上戸の親友の結婚式に出席した。振られたとき、「恋愛より友情!」と開き直ったが、そんな強がったあの時も親友は隣にいてくれたっけ、と16年の友情に感謝した。

こんなエッセイが、14作目の「恋愛」カテゴリに入るか、それとも「その他」カテゴリに入るかは分からない。と言うことで、こんな恋愛経験弱者のエッセイストのために、これまでのカテゴリではくくれない感情のために、例えば「友情」カテゴリを追加して頂けないでしょうか、編集部の皆様。