みんなの中にはヒーローはいるだろうか。
ヒーローは憧れの的。ヒーローみたいになりたいと憧れ、時には勇気をくれる大事な存在である。

でも、そうはなれない。
そう感じて寂しく思う人も、時にはいるのではないだろうか。
私のヒーローはいいか悪いか、私の近くにいる。
そう、私の母だ。

物心ついた頃から、私の母はバリバリ働いていた。
今でも立派に大企業で長く働いて、役職も持っている。だけどそこでも新しいことを貪欲に学んで、次のキャリアを考えることにも余念がない。

もちろん、私はそんな母が小さい頃から自慢だった。当時は「正社員でバリバリ働いているお母さん」が少ない中で、周りからはちょっと浮いてたけど。
仕事も結婚も子育ても全力でこなしている、今でこそ普通と言われる道を普通以上に歩ける母がかっこよかった。

その思いは今でも変わらない。
いつでも目標だし、憧れだし、永遠に私のヒーローなのだ。

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でも、私はそんな母とはたぶん違う道を選ぶ。

私は今27歳。
ちなみにパートナーはいるけどすぐには結婚はできないし、仕事もものすごくできるわけでもない。転職も1回しているし、さまざまな面から見ても母とは大違い。いわゆる冴えない女子の1人なのである。(性格は同じくらい似ているのに……)

幼い頃の私は母の人生が普通であり、自分の人生も同じ様に進んでいくことを信じて疑わなかった。

そんな私でも20代前半は何も思ってなかったけど、最近、自分の年齢が嫌でも見えてしまう時がある。

新入社員の子を教えていてもそう感じるし、何かの拍子に誕生日を祝われて自分の年齢をとっさに自覚してしまう時もそうだ。

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特に結婚式なんて、呼んでくれた友達には失礼だけど、ちょっと辛い。

だって「もうこんな年なんだぞ!社会に認められる形になれ」って直接ではなくても言われている様な気分になるから。

ちなみに、昨年は結婚式に呼ばれる機会も多くてこの辛さとは何回も「こんにちは」する羽目になり、ちょっとしんどかったかも……。久しぶりに会う同級生たちにどんな顔して会えばいいのか、悩んでいるのは地球上で私だけだろうか。

「結婚はまだなの〜?」なんて聞かれた時には、笑顔で「まだかなぁ」と、あと何回返せるのだろう……。分からなくなってしまった……笑。

そうした状況の中で、私は母の人生と自分の人生を絶えず比べてしまう。

「そう言えば、お母さんはこの年ではもう結婚したけど、私は違うか……」
「子供とか家庭とか自分には手に入らないものばかりかな……」

そんな言葉が口から出てしまった時、ふと自分の人生がつまらないものだと悲しく不安になってしまった。

母が楽しそうに仕事も子育ても、なんでも挑戦してきている姿が眩しく見えるからこそ、抱いてしまった感情なのかもしれない。

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昨年のある日、ないまぜになったこんな不安な思いを、母にぽろっと言ってしまった。
ちょっとした喧嘩の最中でぼろぼろに泣いてたまま、まともに顔も見れなかったけど。

「ごめんね、お母さん。私はずっと一社に勤められなかったし、選んだパートナーも男の人じゃなくて女の人。お母さんみたいになれない。普通に幸せにはなれないんだよ」

困った顔をしたけど、母がすっと言った。

「でも自分で決めてきたじゃない。あなたはどうしたい?自分で決めたのだから、大丈夫よきっと」

そっか、それでもいいんだ。
私は憧れている人みたいになれないけど、それでもいい。
自分の道を進んでみよう。
「あなたはどうしたい?」
ヒーローがそう聞いてくれたんだから。

だから、バイバイマイヒーロー。
愛してるから、あなたの言葉と一緒に、私は私の道を行く。