私は記憶力がかなりいい。

暗記科目はテスト前の放課の時間にプリントをちらちらと見るだけで、平均点は軽く取れた。社会では模試で全国1位の経験もある(満点だから当たり前である)。暗記、というより、まるで写真を撮ったみたいに、何という本の、何ページのどこに書いてあるかすぐにわかる。計算でも、いくつか問題を解いていると答えを覚えてしまう。計算ミスをしていると気持ち悪いな、っていう感覚ですぐに気がつく。この能力は、勉強面でかなり有利に働いた。

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勉強面だけではない。IQテストにおいても、暗記の問題だけは、全て解くことができた。人の顔も一度見た人は基本的に忘れない。そのため、向こうに驚かれることもしばしばだ。道や景色も、一度行けば覚えてしまう。そのため、何年も後にもう一度行ってもだいたいわかる。幼い頃から記憶力はよかったようで、一番古い記憶も1才の時の記憶だ。

この記憶力の良さで、人から能力を見出してもらったこともたくさんあった。そのために与えられてきたチャンスもあったであろう。とある人との小さな約束を覚えていて、数年後に覚えていることを伝えたことで、相手がやっと動いてくれることも多々あったのだ。そうやってチャンスを掴んできた。

この一面だけ言うと、良い面だけしかないように思える。しかし、この能力は、想像できる通り、けっして良いことばかりではない。人から言われた言葉一字一句、その時の風景、状況、良いことだけでなく、悪いことも全て覚えているのだ。

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昔は自分が記憶力が良いと思わず、みんなそんなもんだろうと思っていた。そのため、悪い記憶が残って苦しむことは皆あることだと思い込んでいた。しかし、どこかのタイミングでどうやら人々はそこまで記憶力がいいわけではないらしいということに気がついた。

あの時こう言ってくれたよね!って話をすると、よくそんなこと覚えてくれているね、とよく言われる。同時に、揉め事があって、話し合いになり、出来事を全て年月日まで添えて伝えると、なんでそんなことまで覚えてるの、だなんて言われたりする。相手を味方に引き込みたくても、私は覚えていても他の人は忘れていることもある。また裏切られたと私は何度も傷ついてきた。

記憶力が良くて、悪いことはそれだけでない。人との些細な約束までも全て覚えていることも、なかなかつらいものがあった。普通の人なら忘れているような、一年前の些細な約束を全て覚えている。しかし、向こうは忘れている。おそらく、忘れているのが普通なのに、私だけしっかり覚えていて、約束を無下にされたと何度も落ち込んできた。それで勝手に切ってしまった縁もある。

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ある時、この記憶力の良さは、滅多にある能力ではない、と気がついてから楽になった。相手が何かを忘れていても、私の敵というわけではなく、それは普通のことなのだ。悪いことを永遠に覚えていても、根に持ってるわけではなく、私の特徴なのだ。そうわかるだけで、幾分、生きやすくなった。

特徴は良い面も悪い面もある。特徴だということを自覚して、悪い面をどうやって自分の中に落とし込むことが大切なのではないだろうか。