心を満たしてお腹を満たすか、お腹を満たしてお金を使うか。現代の人って忙しいし今は家事=女性の時代ではない。うん。だから家事はするもしないも自分が生きていける範囲であれば最低限でいいんだと私は実感した。

1人暮らしを始めて、実家で3食毎食作っていた大好きな料理もめんどくさくてやらなくなった。一番好きな家事だった。

それだったらウーバーイーツでいいんじゃない?なんてCMが流れてきそうだけど……確かにお店のものは美味しい。すぐに届くし外に出なくていい。けれど食べ終わった後に出てくるのは「美味しかった」という感情と「寂しいな」という感情だ。

そしてまたこんなにお金を使ってしまった……という罪悪感もある。本当に高いなあ最近のコンビニは……。

◎          ◎ 

そう思い私は重い腰を上げて、冷蔵庫を新調して食材を買ってきた。スーパーマーケットへ久しぶりに行った。

上京してからとても物価の高さに驚いた。実家にいた時も買い物はしていたがここまで高くなっているとは……それならコンビニおにぎり二つ買って帰ったら?と頭の中で葛藤もあった。

でも私はそのままカゴを持ち、店の中で目に入った、自分の好きだった食材をカゴに次々入れて行った。久しぶりだなあこの感覚。いつも買い物してたらレジに行ってヒヤヒヤする、あの一定の金額を超えるとお金が足りなくなるんじゃないか現象……それはコンビニでも同じだけどもさ。

100円均一で買ったエコバッグに食材を入れて帰り、冷蔵庫に物をしまっただけで、私は生活してる!という謎の達成感まで湧いてしまった。

その後久しぶりに包丁を握ったり玄米を炊いたりしていると心が無心になった。そうそう、生ゴミを捨てるときは勿体無いからお肉を入れたりお魚を入れたりする薄いビニールに生ゴミを入れて捨てるとか、初心に戻った気がした。

忘れがちになっていた「いただきます」もしっかり言うようになった。食べるのは簡単。作るのは大変。

でも食にまっすぐ向き合えて、この食材はどこから来たの?誰が作ったり採ったりしてくれたの?だれが加工してくれたの?とさまざまな考えも浮かんでくる。食は本当に大切だ。

食事は満足と満腹が違うと有名な料理研究家の先生が仰っていたのを私は覚えていた。

◎          ◎ 

そりゃコンビニのご飯もスーパーのお惣菜もデリバリーもたくさんの誰かがいなければ私の口に運ばれることはない。でもそこに私が求めていた満足はなかったのだ。

それでもこの先自炊ができなくなったらお世話になるだろう。でもやっぱり自分は料理が好きなんだ。だから少しだけ、離れてみるよ。ごめんね。今までありがとうの気持ちも込めて。でも大変なときは助けてね!?と弱気な私の心がまた叫んでいる。

私は今日もウーバーイーツのアプリを見るだけ見て魚でも焼いて、ほうれん草でも茹でて、……と料理の献立を考えるのだった。そして手を合わせていただきますというと不思議と心が軽くなる。料理は過程を知り、家庭を作る特別な作業だと私は思っている。
料理は命を理解する大事な、私の大好きな家事の一つにまた戻った。