キャリアなんてわかんない。やりたいことなんてない。ずっと今みたいにふわふわ生きていたい。働きたくない。これが大学時代の私の考えだった。子供の頃から「貴方は大学に行くのよ」と育てられ、何も考えずに目の前に敷かれたレールを歩いて大学まで来た。そしてそのレールは大学卒業とともに途切れていた。何も考えずにここまで来てしまった甘ったれな私は将来のことなんて考えられなくて、いや、考えたくなくて、現実から目をそらし、とりあえず目の前のモラトリアムを享受し迎えた3年生の2月。流石にもう現実を無視できない時期になっていた。

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就職活動は難航した。とりあえずずっと勉強していた外国語を活かせそうな業界、業種に片っ端からエントリーした。そもそも働きたくないんだから志望動機や就職の軸なんてあるわけがなく、就活サイトをいっぱい見てそれっぽいモノを作った。やっとエントリーシートが通ったと思っても、面接で落とされまくった。
「どうして他社ではなくウチを選んだんですか？」
御社が新卒を募集していたからです。そんなこと言えるわけがなく、就活サイトを見て作ったツギハギだらけの回答はすぐに面接官に見破られて落とされた。だって働きたくないんだもん。

そんな私を採用してくれたのは小売会社だった。最初は小売では働きたくないと思っていたが、それよりも「もう就職活動をやめたい」という気持ちが勝って内定受諾して無事就職活動を終えた。内定をもらった頃から、この会社で働きたくないという気はしていたが、いや働いてみたら意外と楽しいかもしれないし、出世したら海外に関われる可能性もあるかもしれないし、働いていくうちに理想の働き方とか見つかるかもしれないと自分を無理やり納得させた。妥協に妥協を重ねて選んだ就職先だが、入社したての頃はまだやる気があって「いろんな資格を取ろう」「結果を出そう」という気概があった。

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けれども1年間の間に、お客様に理不尽に叱られて傷つき、責任の重さに耐えかね、1日1日を生き抜くことで精一杯で、職場にいくのが怖くて、気づけば普通に生活することがままならなくなってメンタルクリニックに通うことになった。最初にあった頑張ろうという気持ちもかすれていき、今ではいかに楽して責任を負わず新しい仕事を覚えず8時間で帰るかしか考えなくなった。

もう仕事辞めたい。そう思って転職サイトに登録した。転職エージェントと面談して「キャリアについてどうお考えですか？」と聞かれた瞬間にフリーズした。その時私の頭に浮かんだことは、キャリアなんてわかんない。やりたいことなんてない。ずっとふわふわ生きていたい。働きたくない。社会に出てからもうすぐ1年が経とうとするが、なんと私のキャリアについての考えは大学3年生の頃から何も変わっていなかった。とりあえず働いてみたら何かわかるはず、と思っていたものの働き出しても何も見つからず、ただただ日々を過ごしてここまで来てしまった。なんとなくやりたいことはたくさんあるが、それは会社に所属してできることではないし、だからといって自分で起業するほどの気概もない。わからない。ただわからない。ここで働きたくないことは確か。

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大学卒業とともにレールから足を一歩踏み出して、傷ついて、失敗した。私の前に敷かれていたレールはもうない。これからはずっと自分でレールの先を歩いていかなければならない。そうわかっているのに、まだ私は甘ったれな学生気分のままで、自分の進むべき方向がわからず迷子になっている。なぜ皆自分の進むべき道がわかるんだろう？キャリアなんてわかんないよ。