学生時代から大人になった今でも、交友関係が続いている友人は片手で収まるほど。その中でも月に一度は顔を合わせる友人との間に、亀裂を入れてしまったのは間違いなく私のせいだった。
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友人Aとは幼稚園の頃からの付き合いだった。正直その頃の2人の思い出はあまりないけれど、小学校、中学校と同じだったし家も近所だったので、よく一緒に遊ぶようになった。
中学生にもなると、お互い恋愛もして恋バナに花を咲かせていた。
中学3年生になる前の春、私は大きな失恋を経験した。それをきっかけに何もかもがどうでもよくなった。中1の時から私のことを好きだと噂されていた人に、私も好きだと告白して付き合うも、1週間で別れを告げる。沈んだ心に染み渡るような楽しい会話に救われ、そのまま付き合うことになった人に、2ヶ月で振られる。今まで仲良くしていた友人とはタイプが違う子と、無理にノリをあわせて疲れる。
自分でも何がしたいかよくわからなかった。
友人Aには片思い中の男の子Bがいた。たとえその子にいじられて怒っていても、それも嬉しいんだろうなというのが伝わるくらい可愛かった。他の女の子も男の子Bが好きだという噂を聞いて、よく相談にも乗っていた。
それなのに、私は男の子Bからの告白を受け入れ、付き合うことにしたのだ。
自分でも本当に最低だと思う。もっと最低なのは、私はその男の子Bを好きではなかったこと。
今考えてみても、本当にわからない。
たくさん失った気になって、私を好きと言ってくれる人に受け入れてもらえることが、救いになったのかもしれない。
もっと大切なものを失う可能性なんか、考えてもいなかった。
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友人Aとは登下校も一緒だったけど、その日から男の子Bと下校することになった。
一緒に下校していた共通の友人にだけ付き合いはじめたことを伝え、男の子Bと帰っていると、後ろから大きな声が追いかけてきた。
「待てーーーー!」
友人Aは怒っていた。当たり前である。怒って、私を追いかけて、走っている。
「本当に、ごめんーーー!」
私も叫びながら、逃げる。私はいつも逃げてばかりいた。自分ばかり傷ついていると被害者意識を持ったまま。
大人になった今、友人Aとは今でも心許せる数少ない関係でいる。本当にありがたいことだ。あの時Aが追いかけてきてくれなければ。その後2人でしっかり話ができなければ。私たちの友人関係は10年以上前に終わっていた。
現にその男の子Bが好きだと言っていた別の女の子とは、それから口を利いてもらえなくなった。当然の報いである。
「あの頃どうして私を許してくれたの?」
そう友人Aに尋ねると、
「だってあの恋愛であなたとの友情を失いたくなかったから」
そう返ってきた。
あの恋があったから、本当に大切な存在に気づくことができた。