以前、エッセイで入社2ヶ月の新人にして新人育成担当になったことを綴った。今回はそんな戸惑いではなく、育成担当をしていたころの悶々とした気持ちを吐露したい。

新人からしたら私は2ヶ月で会社の数々の歴代レコードを塗り替えた偉人に見えているらしい。初めて会う人でもなぜか私のことは知っているし、何も話していないうちから尊敬の眼差しで見られる。
初対面で名前を名乗ると、あのなつめさん⁉︎と驚かれ、それを小耳に挟んだ他の新人さんがなつめがいるらしい!とまるで芸能人を街中で見つけでもしたようなリアクションをするのはもうお約束になってしまった。
正直、こと新人育成業務遂行においてはハードルと壁ばかりが高くてやりにくい。私はただ新人さんと仲良くなりたいのに。

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この会社で働きはじめて、人の心を動かすことの大切さを改めて知った。

カスタマーとはアイスブレイクと共感に重きを置いて関係を構築する。関係ができていない人の営業は受ける気になんてなれない。メンバー間でも信頼関係ができていなければ業務を任せることも連携を図ることもできない。

そして、新人を育成するには、頑張る原動力となるモチベーションを持たせてあげないといけない。初めは誰しも一つ一つのことに時間がかかるし、慣れないことでストレスも多い。頑張っても結果が伴わないことだって多い。でもその時期を乗り越えなければならない。

だから途中で挫けないために、理由が必要なのだ。忙しかったり、何か別の両立していることがあったりする中では特に、どれだけのモチベーションがあるかで、業務にかける時間もクオリティもかなり変わる。

分かっている。もう、それは分かっているのだ。でも、私はこれといった動機付けを意識的にしてもらわなくても、仕事だからという半分の諦めと半分の現実的見方でやってこれたから、どうやったら新人達のモチベーションをあげられるのか想像するのが難しかった。
ただ、間違えないでほしい。それは私が特別だからでも、才能があるからでもない。新人さんが今ぶち当たっている壁を、私はもっと早く、この会社ではないところで経験していたというだけだ。

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中学生まで、私は積極的に何かに取り組むような生徒ではなかった。どちらかというと、周りの目を気にして、やりたいことがあっても最初の一歩が踏み出せないようなタイプだった。でも、それで後悔することが多かった。

ある時、またいつものようにやってみたいけれどともじもじしている中、えいっと飛び込むことができた。理由は特にない。というか明確なものは自分でも分からない。

どうせいつも後悔するんだからとも思ったし、やって後悔した方がいいというありがちな教えを自分に言い聞かせた気もする。はたまた、ただの気分だったのかもしれない。

なんにせよ、私はその時、やっと自分から今の自分、そして今いる環境を変える勇気を出せた。何かを変える勇気を持った先にある出会いやワクワク、そして同時に変えた環境の中で最初は粘らなければならないことを知った。

私が特別なわけではない。なのに、それがわかってもらえない。私はレジェンドでもなんでもないと言うほどに、むしろ周りからは、なつめの基準値は高いと神様扱いされてしまった。

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私は新人のところまでエレベーターで降りて、そして1階ずつ、一緒に高みまで連れてこなければならない。原動力には彼らのモチベーション、やる気が必要らしい。

でも、ではエレベーターに乗ってくれない人にはどうしたらいいのか。上を見上げてすごいね、高いねと言うばかりで、自分は乗ろうともしないような人たちに、私はどうしたらいいのだろうか。

仕事だからやらなければいけない。でも、こういう人たちは高みに連れて行かなくてもいいのではないか。適材適所がある。この階で頑張ってもらう方がいいのではないか。

それとも、そう思ってしまうのは、私に育成能力がないからなのか。私は育成業務というこの新しい環境で粘って、自分自身も高みに上らなければならないのではないか。

答えのない、考えても仕方のない問いに悶々としながらその日も新人達と打ち解けるべく、試しに冗談の一つでも言ってみるのだった。