※念のためお伝えしますが、このエッセイに「離乳食は手作りすべき!」という意図はありません。
もし育児中にこのエッセイを読んでくださっている方がいらっしゃいましたら、どうか睡眠を優先してください。
本日も育児お疲れ様です。

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人参は7mm程度の角切りにして軟らかく煮る。ご飯は100g毎に分けて冷凍。シラスはエビが混ざっていないか確認して湯通し。

可愛い娘のために離乳食を作り始めてもうすぐ1年。帰省の際やストックが切れてしまった時など市販のものを与えることも度々あったが、この一年間ほとんど私が作ったものを与えてきた。娘の長い人生の中でたった1年ほどの短い離乳食期間。私は離乳食作りが好きだ。

嘘でーす! 離乳食作るの面倒くさいでーす! 皆さんやったことあります?

まず月齢によって与えていい食材かどうかを調べないといけない。食材の選別がすんだら月齢に合わせ野菜を細かく切ったり、すりつぶしたり手間がかかる。うまくできたとしても何を思ったかひっくり返し、ぶん投げられ、髪の毛にすりすりされ、ろくに食べなかったことも1度や2度ではない。

散らかった床の掃除。何を作るか考える時間。買い出しに行く体力。この作業を子供が夜通し寝なかったり、夜泣きがひどかったりの寝不足状態で作るのがしんどい。手作り離乳食は愛情だと思って頑張ったが、たまにさぼらなければ力尽きそうな作業量だった。

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ということで市販の離乳食もがんがん利用した。母親歴が浅く料理も得意でない私が作るよりも、優秀な大学を卒業され日々研究を重ねている食品会社の方が作ったものの方が娘の成長にいいに決まっている。

が、高い。月齢、容量、ブランドにもよるがだいたい1パック税込み150円。娘は良く食べるので1食で200g以上、2パックはペロリと平らげてしまう。毎日3食で6パック900円、30日で27000円。

夫婦二人の1か月の食費が30000円前後だった我が家にとって、これはなかなかの出費だった。

「○○ちゃんの誕生日プレゼントは何がいいかな~?」

初孫フィーバー真っただ中、原型をとどめないほど破顔させた父が聞く。

「離乳食のパックが欲しい!」
「離乳食?なんで?」
「な、なんとなく大きな地震が来る気がしてさ」
「南海トラフもあるしなぁ…」

こうして私は無事大量の離乳食をゲットした。

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「離乳食キロク♡」毎食異なるメニューをアップしている人。大人のメニューを離乳食用にアレンジしたレシピを紹介している人。絶対にまねできないキラキラ投稿を見る度に、娘に申し訳ない気持ちになった。

我が家の場合、親が食べない野菜を離乳食のためだけに買うことはしなかったため、いまだに娘は食べたことのない野菜がある。また残った野菜の使い道が思いつかなかった場合、レシピを無視して全部ぶち込んだ。

申し訳ないとは思いつつ、ついつい親の性格が出る。

「今週は何を作ってるの?」

娘をだっこした夫がキッチンを覗いて聞く。

「インスタで見たレシピで、ぶり大根を作ってみた!」
「へ~、俺らより良いもん食ってるな~」

張り倒すぞ。

インスタグラムの保存欄にはたくさんのレシピが並ぶ。これは味が濃かったから次は野菜の量を増やそう。これは好きだったみたいだから、また作ってあげたい。野菜が固かったのかシンプルに噛まなかったのか、便でそのまま出てきてしまったり、予想以上に調理に時間がかかったり、電子レンジの中で大爆発を巻き起こしたり、失敗も多々あった。

できることならもう二度とやりたくないが、娘を思いながらの離乳食作りは愛おしい時間だった。使う食材や作っているところを見せていたおかげか、今のところ娘が好き嫌いをせず偏食もない

娘は今月で1歳4か月になり大人用のご飯を取り分けることが増えた。ご飯は普通炊きのものを100g、おかずも100g、以前に比べよく噛んで食べられるようになった。解放されるとなると、うっすらと寂しさを感じる。娘が離乳食を卒業するまで、あとわずか。