私たちが年をとったら、承認欲求の行末はどのようになるのだろうか。現在既に老人ホームでの利用者の日常生活の様子が施設の職員によってインスタグラムやYouTubeで発信されている中、私達がお年寄りになったらスマホを手にして自ずから発信する人が多くなりそうだ。
きっと高級老人ホームでは、「若い頃、登録者数やフォロワー数がウン十万でした」などと元インフルエンサーというのを振りかざして、「無料にしてください」などとのたまう利用者、それに対して「うちの施設のことを是非是非発信してください」と乗っかる胡散臭い笑顔の施設が続出するだろうなと今の世間の流れを見ていると、思う。
どだい一般人には関係のない話だし、その人々が利益を享受していても何がどうなるってわけでもない。
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現在の高齢者施設が行っている発信の役割は、活動報告、利用者家族への安心材料など、割と現実的な面があると思う。
「今日はホーム内にあるネイルサロンで、肥厚爪をケアしてもらってから、くすみピンクのネイルをしてもらいました♡明日はイルミナカラーで白髪染め♡」
「今日の夏祭りでは懐かしのマリトッツォ、クロッフルを食べて、みんなでBTSのButterを踊りました✨懐かしすぎて草生えるね」
「50年ぶりに地雷メイクした!やっぱりロムアンドのアイシャドウ優秀」
という、キラキラ老人ホームでのキラキラした元インフルエンサーの婆さん達による投稿を見て、ちょっぴり嫉妬をしてしまいそうな自分が容易に想像できて怖い。
そうならないよう、自分は自分で目標や目的を決めて努力するほかない。夢中になっている時は人のことなど気にならないから。
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私は老後のことを思って、脱毛サロンでハイジニーナ(パイパン)にした。母が介護職ということもあり、「利用者さんの陰毛にウンチがついてしまうと介助しにくいんだよね」と言っていたので、将来私を介助してくれる方に迷惑がかからないように、無毛状態にした。
私たちが年をとった頃には、人間ではなくロボットが介助してくれるかもしれないけれど、ロボットも無毛の方がラクかなと思ったりして。鏡で見ると自分がキューピー人形になったみたいで面白い。それに蒸れなくなったので快適快適。
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自分もキラキラ老人ホームに行けるようになりたいのだろう。嫉妬をするということは、「そうなりたい」という思いが心の奥底にあるからであって、全く関係や興味のない対象にはそんな感情はまず湧き起こらない。
例えば、可愛い女の子がチヤホヤされているのを見て、心から「いいね!」と思える人はよほどの聖人じゃないか? 私は聖人じゃないし、承認欲求の塊だから、「あぁ、いつの時代も世界はこうだよね」と思って頬をふくらましてしまう。
自分が満たされれば、素直に「いいね!」と思えるのかもしれない。まだまだ未熟な心の持ち主だ。嫉妬しても何も変わりはしないから、自分に「いいね!」して、人にも「いいね!」したい。
果たしてキラキラ老人ホームというものがその時に登場しているのかはわからないが、今も既にサービス付きの高級老人ホームはあるようだ。
「ぴに頼んで棺に若い頃使ってたレディディオール入れてもらう予定」
という、キラキラ婆さんのポストにも心からの「いいね!」ができるような、徳の高い清貧婆さんになりたい私であった。