恋愛ができない。23歳。彼氏なし。処女。恋人が欲しいとも思わない。そんな私は恋愛至上主義の世界では異端らしい。

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大学生の時、ゼミの初めての飲み会に行った。案の定話題は恋話になって私に話が振られた。その時私は「彼氏いないよ!今までもいたことない」と言った瞬間場が凍った。やべっと思って「え〜なんか気まずくしちゃった?!」と言って誤魔化した。その空気を振り払うかのように、最近彼氏と別れた女子が「良いと思う!!!」と言った。

良いと思う?私はその言葉にん?と思いつつ、彼女の話を聞いた。彼女は「自分も彼氏と別れてこれから1人で生きていくつもりだし、彼氏なんて要らない!彼氏なんていない方がいいよ!」と。幸いその後私のことについては掘り下げられず、話題はその子の元彼のことになった。でも、私はその子の発言にモヤモヤした

「良いと思う!」って何?自分は誰かに許可されないといけない人間なの?恋愛をしないことってそんなに変なの?その子は、性教育について研究している子でLGBTQの理解促進の運動にも参加していた。そんなLGBTに「理解のある」人でも恋愛しない人に対して「良いと思う!」なんて言ってしまうんだ。人生で最悪の飲み会だった。

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そんな私も20になった頃は、彼氏が欲しいと思ってマッチングアプリに登録した。その頃は私も他の人みたいに普通に恋愛ができると思っていた。今まで彼氏がいないのは縁がなかっただけだと。あとは成人して恋愛経験無しなのはやばいなと焦っていた。顔がタイプの男の子と数ヶ月やりとりして実際に会った。人生の初めてのデートに浮かれて、自分も男性と手を繋ぐことができるんだと思えて嬉しかった。話しやすくて楽しかったけど恋愛感情が湧くことはなかった。

何度目かのデートの帰り道にホテル街に連れて行かれた。「ここに入ってみない?」と聞かれて「絶対に嫌」と言って繋いだ手を振りほどいて帰った。手は繋げても絶対ホテルは行けないって。何やってるんだろう、私。そう思って帰りの電車でマッチングアプリを消した。

「あー、私は恋愛が必要ないタイプの人間なんだ」と実感した。ずっと、恋愛したい!!彼氏欲しい!!と思っていたけど、本当は全くそんなことはなかった。一度そういう人間だと自覚すると「恋愛」に対するプレッシャーがスーっと消えていってすごくスッキリした。

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学生の頃は「私も年をとればいつか恋人ができる」そう思っていた。でもそのいつかは来なかった。恋愛ができないこと。この世界ではそれが異端で、少数派らしい。それまではニュースやSNSの世界でしか関わりのなかった性的マイノリティとかLGBTQという言葉が身に迫ってきた。

色々調べてみて、自分に近いセクシャリティがいくつかあることがわかった。人間に恋愛感情を抱かない私はアロマンティック?それとも乙女ゲームが好きで夢女子な私はフィクトセクシュアル?なんにせよわかったことは自分は普通ではないということ。

「普通」から外れるのが嫌だ。皆と同じでありたい。でも自分を欺くことの方がもっと嫌だ。普通になるためだけに自分を変えるつもりはない。恋人を作る努力もしたくないし、セックスも経験しなくても良い。

恋愛という一般的な楽しみを自分だけ楽しめていない状態が辛い。でもしょうがない。普通に恋愛できる人だったらこんなことで悩まなくてもいいのに。普通に恋愛できる人だったら良かったのに。これからも彼氏がいなくて恋話ができないことで飲み会の場を凍りつかせていくかもしれないんだと思うと憂鬱だ。