私の就職活動は、人生の中でも、一年弱という短いあいだでありながら、かつてないほど多くの人に出会った出来事だった。

もうそれは数年前の出来事になるため、知り合った人の多くは顔も名前も、出身大学も忘れてしまっている。インターンシップや会社説明会、面接やグループディスカッションといった選考過程で知り合い、連絡先を交換し合ったが、いま、ラインの友達一覧を見て、「この人、だれだっけ?」となっているのは、きっと就職活動で知り合った人が多い。

しかし、そのなかに、一人だけ記憶に残っている人がいる。それは、私がその人に対して、小さな罪悪感を抱いているからだ。

みんなやる気があり、打ち解けていくのに時間はかからなかった

それは、大学三年生の夏休みに参加した、とある企業のインターンシップでのことだった。1dayインターンシップや、半日、ほとんど会社説明会と変わらない、という会社もある中、その企業は5日間じっくり課題に取り組む、実践型のインターンシップだった。そして、その5日間だけではなく、その前後に少し日を置いて、ガイダンスと成果発表会があり、合計7日間のプログラムだった。

参加者は15名ほどと少なめで、その15人が5人ずつの3グループに分けられた。与えられた経営課題の解決のために、グループで話し合い、案を最終日に発表するという流れだった。グループは、男子3人、女子2人で、大学も学んでいることも、サークルや趣味もちがった。けれど、選考を経て参加できたインターンシップだったということもあり、みんなやる気があり、打ち解けていくのに、それほど時間はかからなかった。

そのなかの一人の男の子とは、会社から自宅までの帰る方面が同じということで、自然と毎日同じ電車に乗って帰るようになった。普段は人見知りの私でも、インターンシップで一日同じ時間を過ごし、ある程度話していたから、初日の帰り道も緊張することなく話せた。同じ年齢ということもあり、子どものころに流行ったテレビドラマや音楽の話で盛り上がった。

返信くらいすればよかった。後味の悪い最後になってしまった

そして、最終日は、グループごとのプレゼンテーションを行った。私たちのグループは、採用とまではいかなかったものの、社員から高い評価を得て、有益なフィードバックをもらうことができた。
その日は午前中で終わる予定だったため、私はそのあとに、大学の同じゼミの友人と昼ごはんを食べる約束をしていた。
インターンシップが無事終わり、友人との待ち合わせの場所に向かう電車の中で、一通のラインが届いた。それは、インターンシップ期間中、一緒に帰っていた彼だった。

メッセージ全体は見えなかったが、「○○さん、これから暇?一緒にランチしない?」という文字が見え、私は開くのをやめた。いわゆる、未読無視をしたのだ。それは、当時付き合っていた彼がいて、まったくそのインターンシップの彼をそういった対象で見ていなかったからだ。さすがにランチまで一緒に行く気にはなれなかった。そのあと、数日、私は何もしなかった。

しかし、今思い返すと、返信くらいすればよかったなと反省している。そもそもその日はもともと友人と会う予定があったのだから、それを正直に伝えればよかったと。
相手の彼も私にはそれほど興味がなかったのか、その後連絡が来ることはなかったが、それでも、後味の悪い最後になってしまったと思っている。恐らくもう会うことはないだろうが、機会があれば、謝りたい。

ここで書いた出来事も、対面でのインターンシップであったからこそ起きたことだ。昨年から今年にかけては、コロナウイルス感染拡大が猛威を振るい、会社説明会だけでなく、面接などの実際の選考もオンラインで実施する会社も多いと聞く。
良くも悪くも、本当に多くのことを経験する就職活動。今年の就活生が、実りある時間を過ごせるようにと願ってやまない。