4歳の息子に手を焼いている。あれは嫌、今すぐこれする、緑の野菜は嫌いだから食べないなど、あらゆる行動に文句を垂れ、しかも要求が通らないと癇癪を起こし泣き喚く。我が息子のイヤイヤ期は2歳終わり頃から始まったのだけど、それ以来ずっと困り続けている。
結構追い詰められていて、私は息子が嫌いだとどうしても思ってしまう。母親なのに愛情を持てないなんて。自分のことを責めてしまうし、でも嫌いと思うことをやめられなくて、一緒に暮らすのもしんどい。とうとうストレスで心療内科に通うほどになってしまった。
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家庭内では手に負えなかったので、市の子ども相談センターに定期的に通っている。そこでの職員さんとの対話から、私自身の問題を把握した。
端的に言えば、真面目にやろうとしすぎるのだ。きちんと躾けなければ、栄養バランスよく食べさせねば、規則正しい生活をしなければ。子どもにとって良いと私が信じていることをしないといけない。でも息子は癇癪を起こしてさせてくれない。こんなに彼のことを想ってやろうとしているのに、どうして。やらなきゃ、やらなきゃと溺れる私に職員さんは言う。
元気に遊んで、とりあえず腹が満たされて、眠くなったら寝る、それで全部良しです!
ちょっと楽になった。でも、言葉を理解してもなかなか日々の行動は変わらない。
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私はあまり、人に愚痴を吐かない質だ。特に私の母親には。彼女の価値観は、私には全く合わないので。しかし、日々の疲れのせいか、私は私の母にイヤイヤ期で癇癪が大変、と少しこぼしてしまった。我が母はあれこれ適当なことを好き勝手言ったあと、最後にこう付け加えた。
「あなたはイヤイヤ期がなかったから、よく分からないわ」
ぶわっと記憶が蘇る。小さい私はいつも母の指示に従っていた。良い子であろうとしていた。だってそうしないとすぐにヒステリックに怒鳴られるから。
ああ、私は母親に真っ向から反抗する息子に、どう対応したらいいのか心底分からないんだ。だって自分が反抗していないから。そういうとき普通どうなるのかすら分からない。一般的な親子がどうやりすごしているのか、想像もできない。
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だから自分の行動をなかなか変えられない。困り果てる以外に選択肢を持っていなかったから。いや、ヒステリックに怒鳴り従わせるという選択肢はあるけど、それは選びたくない。
懺悔すると、私が怒り心頭になり何度か怒鳴ってしまったことがある。後から私の母親を想起して落ち込む。そして、そもそも怒鳴ったところで従うようなたまじゃないのだ、息子は。余計に癇癪を加速させ、怒れる声がふたつになり収拾がつかなくなるだけ。とても非生産的である。
イヤイヤ期が終わっても、私と息子の関わりは続く。お互いを尊重し合う関係になりたいが、それは今まさに第一歩を踏み出さないといけない。そうしないと、私の母がいつも怒鳴っていた記憶しかないように、彼の中の私も同じになってしまいそうだから。自分を変えよう、より良い母親になれるように。子どもにとって良いと私が信じていることを無理にでもやろうとするより、今の私たち親子に必要なことだ。