就活はしんどかったけど、代わりに私は、無駄な世間体に振り回されることが無くなった。

大学では半年間みっちり就職活動をした。だが、20社以上に応募し、内定が出たのはたった1社だけ。第1志望の出版系からは、1つも内定が貰えないまま就活は終わった。「私は仕事へのこだわりがある!」「バリキャリになるんだ!」と半ば信仰のように思っていたから、憧れの会社から否定され続ける日々の中で、私の自己肯定感はしっかりと削られていった。

というのも、私は元々高校中退のフリーターで、その後に無理やり勉強して大学に入ったものだから、就活では、「そこら辺の大学生より何倍も仕事をやってやるんだ」という意気込みのようなものが、相当に強かったのだ。

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第1志望は出版社だった。大学でも文学を専攻するほど本が好きで、「私が受からないなら誰が受かるの?」ぐらいの心意気でエントリーシートを出し続けた。だが、結果は全落ちだった。

この会社もダメ、この会社からも不合格通知が来ている。そんな就活の中で、私の中の、「何がなんでも出版社で仕事がしたいんだ!」という軸はすっかり折れてしまい、いつの間にか私の軸は、「業種はどこでもいい、だからどこか、私を認めてくれる会社に出会いたい」という、情けないものに変わっていた。
すっかり自信を無くし、中学生の時からの憧れを捨て、なんなら自分が悲劇のヒロインぐらいのつもりで過ごしていたけど、今ならわかる、悪いのは全て、自分だったんだ。
出版社で働きたいと言いながら、出版社でバイトしてみようとは思わなかった。まともな文章も書けないくせに、編集がしてみたいだなんて、浅ましいことを面接では話していた。

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さっさと出版社のバイトで働いてみて、ライターのバイトでもしてみて、自分のレベルを知り、出来ることを知り、そこから努力を重ねるべきだった。
結局、今、私は内定を頂いた会社では働いていない。代わりに、出版社でフルタイムのアルバイトをしている。

新卒カードを捨て、就活では全く手応えのなかった業界でアルバイトをしているなんて、周りから見ればとんでもないバカに見えるかもしれない。実際、私もそう思う。
だって、半年間の就活は、全て無に帰してしまったのだから。だが、こんなにめんどくさい半年間を経て、それを無駄にしたからこそ、「私は世間体に合わせられない、ワガママな人間なんだ」ということがよく分かった。周りの何となくに合わせる無駄な頑張りをしている暇はないんだ。私は、みんなの普通よりも、自分の我を優先させてしまう人間なんだ。それに、「みんなの普通」は、就活で終わるわけでは無い。結婚、出産、子育て、親戚付き合いなどなど、これから先もずっと、ついてまわる、いらない試練なのだ。これから先の試練達との距離のとり方も、就活を通して、何となく学べた気がする。

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私にとって、就活は、ただ辛いだけで、全くもって無意味だった。けれど、就活の中で足掻いたことで、自分の譲れない部分と、他人に合わせられない性質を自覚できたのは、大きな収穫だった。
しょっちゅう他人の幸せに釣られて、自分と他人を比べてしまうけれど、「私は所詮他人に釣られきれない、面倒臭い人間なんだ」ということに、就活を通してようやく気づいた。これからは、やれる事だけ、得意なことだけ、頑張っていきたいな。

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