30も手前になると、結婚式のお呼ばれの1件や2件もあるはず。
だと思っていたのだが、私にはつい最近までその機会がなかった。
そんな私に初めて結婚式の招待状をくれたのが、同じ名前の大好きな友達だった。

彼女とは高校1年の時に同じクラスになり、それからかれこれ15年近くの付き合いになる。
お互いに数学が大の苦手で、小テストの追試、再追試、再々追試、再再々追試……と、2人で机を並べて合格するまで戦った仲だった。
大学こそ同じ県内の別の大学に進学したが、教員を目指していた彼女は、県外の採用試験を受験して合格。社会人になると私たちは離れ離れとなってしまった。
それでも、仕事の合間を縫って帰省して、時々遊んだりご飯に行ったりした。
時には私が彼女の暮らす部屋に泊まらせてもらったこともあった。

そんな大好きな彼女だが、ある一瞬だけ嫌いになったことがあった。
それこそ彼女の結婚式に関わることで。

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今からおよそ1年前のこと。

「結婚式の日程が決まりました〜!予定空けててくれると嬉しいです!」と、挙式の日時と大まかな場所がLINEで来た。断る理由は皆無なので、「連絡ありがとう~!!もちろん出席します!」と返信をし、そそくさとその予定をカレンダーに書き込んだ。関東で就職し、そこで旦那様と知り合い籍を入れたということで、都内某所で挙式と披露宴を行うとのことだった。

その時は、都内の某有名地区で行う、ということまでしか連絡をもらっておらず、具体的な式場名はまだ連絡が来ていなかった。「まあそのうち連絡が来るだろう」と軽い気持ちで待っていたのだが、2か月待っても、半年待っても、具体的な式場名の連絡が来なかった。

結局式場名を知ったのは、式当日まで3か月を切った頃。ここで一悶着が発生したのだった。

「具体的にどこの式場ってのは、招待状もらわないと教えてもらえないのかな?私たちも朝の準備とかもあるので、早めに教えてもらえると嬉しいな……!」

と言った旨のLINEを、一緒に招待されている友人たちとのグループトークに入れた。すると、彼女からこんな返事が来た。

「教えるのは別に構わないけど、招待客はつなだけじゃないし、招待状送る前に細かく説明しなきゃならない……となると私の負担も大きくなるわけ。招待状の意味も薄れてくるし。◯◯(式場のある地名)って広大な範囲を指すわけでもないのに……」

正直私はブチ切れた。式場の場所を教えたところで減るわけではないし、その前にその「招待状の意味」とは?と頭が大混乱。怒りのボルテージが最高潮だった。

ちょうどその時、そのLINEグループに入っている友人たちと飲みに来ており、私と彼女のやり取りの一部始終を見届けていた。彼女たちもブチ切れ、とまではいかないが、そのLINEを理解はしていないようだった。
「きっとマリッジブルーなんだと思うよ」と私はなだめられたが、どうも納得できない。そこまで言わなくたってよかったじゃん。
そんな悶々とした気持ちを抱えながら、初めての結婚式出席に向け準備を進めていた。

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そこから時間は過ぎ、いよいよ挙式当日。
激しくやりあったわけではないものの、あんなことがあってしまったので、正直どんな顔をして彼女に会えばいいのかわからなかった。
だが、式場の扉が開いた瞬間、その心配は杞憂だったことがわかった。

大安吉日。彼女たちの新たな門出を祝うかのような晴天の日。陽の光がたくさん入るような、とても明るい式場だった。荘厳なオルガンの音色と共に扉が開き、彼女がお母様と一緒に入場。式を挙げると初めて連絡をもらった日から、彼女の花嫁姿を想像しては胸に込み上げてくるものがあったが、いざ実際に見るともう限界。
15年付き合ってきた中で、彼女史上一番最高に輝いていた瞬間だった。あまりにも美しすぎて、私は涙が止まらなくなっていた。

「おめでとう。本当におめでとう」

そんな気持ちでいっぱいになった瞬間だった。

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昔から彼女は、どんな時も笑顔を絶やさずに、いつもニコニコしていた。
教員として勤めている今も、きっとその笑顔を子供たちに向けて過ごしているのだろう。
ただ、その日の笑顔は、彼女史上一番輝いていたと思う。ずっと付き合ってきた私が認めるんだから間違いない。
そんな彼女の笑顔に、旦那様はイチコロだったのだろう。私も彼女の笑顔が大好きだ。
それと同時に、一番輝いている笑顔を見せられるほど、そばにいる旦那様を彼女は信頼し、愛しているのだとも思った。

私のカメラロールに収まっている今回の挙式関連の写真は、気づいたら500枚近くになっていた。どの写真を見ても彼女の笑顔が輝いていて、見返す度に、あの日感じた幸せな気持ちが蘇ってくる。

ほんとに、本当に、心からおめでとう。
どうか末永くお幸せに。