27歳の私は今、人生初のちょっとした反抗期を迎えている。
父は地方公務員だったため地域に顔が知られており、どこに行っても「お父さんにはいつもお世話になっているよ」と声をかけられた。知らない人から馴れ馴れしく話しかけられることに違和感を感じながらも、周りに認められ信頼されている父のことがいつも誇らしかった。
それなのになぜ、今、反抗期なのか。実は去年からずっと考えていた。
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父は行政書士やファイナンシャルプランナーの肩書きをもっており、現在は個人事業主で様々な仕事を掛け持ちしている。毎日違う仕事をしているため、父がどんな仕事をしているか聞かれるとはっきり答えることができない。
大変そうだと思いつつ、実は私も今年からフリーランスとして働き始めた。
私はキャリアスクールで勉強し、キャリア支援や場作りに興味が湧いた。新しい情報を取り入れることがたまらなく楽しく、自分の未来を想像しては胸を躍らせている。
一方で私の父は毎日仕事に追われ、趣味に時間をかけられず生きる意味を失っている気がしている。つい先日も好きなアーティストのライブに行きたいと思わなくなってきたと話していた。
そんな父に腹が立っている。
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父が地方公務員を辞めて個人事業主になったのは、父の母親(私の祖母)が認知症になり要介護になったからだ。個人事業主になったら時間の使い方を自分で決められるようになるんだと父が言っていたのを覚えている。
しかし、現実は違った。祖母の介護をしていた頃は仕事にセーブをかけていたように感じたが、今は目の前に積み上げられた仕事に手一杯になっていて余裕がなくなっている。
だから私は父に腹が立っている。
子どもの頃からずっと母親似と言われてきたし、自分でも母とは好みが似ていて話も合うので母親似だと思い込んでいたが、おそらく私は父と価値観が似ている。
自分のことより他人を優先する性格。頼まれると断れないので常にボランティアのようなほとんどお金にならない仕事に追われている。自分を頼ってくれる人の期待に応えたい気持ちはよくわかるが、自分のことも大事にしてほしい。
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父は資格取得のためのセミナーや試験でよく都内に行っていた。地方から頻繁に都内に出かけると出費がかさむため、交通手段は高速バス。私もキャリアスクールのオフライン会やイベントのために都内へ行くことがあるので、交通費を安く済ませて何度も赴きたい気持ちはよくわかる。
祖母が認知症になり父が介護していたころ、愚痴も吐かず毎日介護をしている父のことをずっと心配していた。
そんな時に父が「おばあちゃんが認知症になって久しぶりに手を繋いで歩いたんだ。歳をとるって悪いことばかりじゃないね」と嬉しそうに話してくれた。
今から6年以上前のことだが、私はその時の父の穏やかな表情と言葉が印象的で今でもはっきりと覚えている。
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そうだ、私はそんな父が好きなんだ。
自分を犠牲にしてまで人の役に立とうとする父、無償の愛で家族を優しく包んでくれる父、趣味に没頭すると子どもみたいにはしゃぐ父。
尊敬する大好きな父でいてほしいからこそ、今、自己犠牲をして四六時中仕事に励んでいる姿に無性に腹が立つのだ。
人の心配なんかせず、もっと自分のことを大切にしてほしい。長生きしてほしい。
個人事業主として自分を大切にしながら働いているロールモデルを知っているから、父の働き方が気になってしまう。しかし、私自身はまだ駆け出しで、父に対して偉そうにものを言える立場ではない。
そんな今の自分の状況に、なにより腹が立っているんだと思う。
今の私にできることは、父への尊敬や感謝の気持ちをありのままの私らしい言葉で伝えること。いくら家族とはいえ言葉にしないと気持ちは伝わらない。私は私らしく、父も自分らしくこれからを生きていけるよう、まずは歩み寄りから始めよう。