先日会社の昼休みに同僚と話しているときに、得意料理は何か?という話になった。
ハンバーグとか?と聞かれたが、自分では作らないので首を横に振った。
作る工程が多いことはもちろんあるが、好みのおばあちゃんの味を再現できないからだ。
◎ ◎
小学校5年生まで、学校からおばあちゃん家に帰っていた。
当時母方の祖母の家の近くに住んでいた。
母親はパートで不在のことが多く、私や弟を子供だけで留守番させるのが不安だったようだ。
おばあちゃんは大体家にいたので、鍵っ子だったにも関わらず、あまり自分では鍵を開けたことがなかった。
学校から帰った後はおやつを食べてから、当時習っていたピアノを練習していた。
おばあちゃん家にあるのは、アップライトピアノで、自宅にあるのは電子ピアノだったので、ピアノに慣れるためにもおばあちゃん家でピアノを弾けるのは好都合だった。
ある程度練習したタイミングで母が帰って来て、練習の成果を見てもらっていた。
その後家に帰るときもあれば、1週間に2回くらいおばあちゃん家でごはんを食べることがあった。
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そのときおばあちゃんは、孫たちが喜ぶようなメニューをたくさん振る舞ってくれた。
オムライス、ロールキャベツ、唐揚げ……。
その中でもハンバーグは、少食だった私も喜んでよく食べたので、おばあちゃんの作る定番メニューになった。
おばあちゃんのこだわりポイントは、スーパーではなく、お肉屋さんでひき肉を買ってきて、つなぎには家でミキサーにかけたパン粉を使っているところだ。
ハンバーグ専門店とはまた違うレトロなカフェや老舗洋食屋さんで食べるハンバーグのような味わいがある。
その約10年後、大学生になり留学していたときにおばあちゃん家でごはんを食べた感覚が蘇った。
ホストマザーは料理上手で、夜ご飯は色々なメニューを作ってくれた。
私がホームシックにならないように、たまにアジア料理を出してくれた。
巻き寿司風のもの、中華風の炒め物などだ。
アジア風ではなく、どちらかといえば西欧っぽいハンバーグも作ってくれた。
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ホストマザーが作るハンバーグは、ひき肉の中には、にんにくが入っていて、お米も入っていた。
もちろん洋食のハンバーグとは見た目も味も食感も別物だったので、ハンバーグという料理名ではないかもしれないが、肉肉しい感じがハンバーグそっくりだった。
私がハンバーグ風のものが気に入ったことをホストマザーに伝えると、その後頻繁に食卓に上った。
おばあちゃんが作るハンバーグとは全く違うものだが、どちらもおいしくて、今もたまに無性に食べたくなる。
今度帰省した時は、おばあちゃんにハンバーグを作ってもらいたい。
これまでずっと甘えてきたけれど、そろそろこの機会に作り方を教えてもらうべきかもしれない。
でも自分で作れるようになると、おばあちゃんのハンバーグの味に感動できなくなるかもしれない。
それは言い訳にすぎなくて、おばあちゃんの作るハンバーグが食べたいのだ。