女に生まれたわたしだが、わたしの憧れの人物はいつも「父」だった。
よく思春期に差し掛かると、父と話すことが嫌になるとか、洗濯物を分けたいとかなどの話が聞かれるが、私にはそのような気持ちは一切なかった。
父はいつも私の人生の道標となってくれていたから。
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私と父は真反対の性格をしていて、話し上手なうえに聞き上手。さらに、色々なことに興味をもち、好きなことはとことん突き詰める性格。
明るくてリーダーシップもあり、私の家庭は父のお陰で明るい日々を送っていたと言っても過言ではない。
父に憧れを持ったきっかけは、学生時代に受けていたいじめがきっかけだ。
小学生の頃、仲間外れにされ、学校に行くことがとても辛かったが、家族に話すと迷惑になると思い心の内を打ち明けることはなかった。
しかし、いじめのストレスが体に現れるようになり、家族に相談する決意をしたのだが、話を聞いた母は、ただ話を聞くだけで何も対応をしてくれなかった。
「やっぱり話をしてもダメか」と思っていたところに、父が仕事から帰宅。
父と2人きりになった時間があったため、思い切って父にも相談。すると父は「今すぐ学校に言いに行こう」と、母と私を連れて学校に話をしにいってくれた。
翌日から私のいじめは収まった。
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しかし、中学校に上がっても再びいじめを経験。自分では対処ができなくなり、再び父に相談した。すると父は一冊の本を手渡し、心に残るメッセージをくれた。
「休み時間は本を読みなさい。1人でいることは寂しいことなんかじゃない。1人で居れる人は強いんだよ」と。
小学生の時は父が私の代わりに先生へ話をしてくれたが、中学生に上がると私の立場や年齢を尊重して、そのような対応をしてくれたのだと今になると思う。
そこから私は休み時間は勇気を出して、父がくれた本を読むことにした。
初めは周りの視線を感じていたが、次第にその気持ちも落ち着いてきた。この経験がきっかけとなり、私は本を好きになった。私はそれ以来、現在に至るまで毎日必ず読書をするようになった。
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また、大学生4年生で今後の進路を決めるときも、私が興味がある仕事を相談するときは、必ず背中を押してくれた。否定されたことは一度もない。
父はいつも言っていた。
「子供の背中を押すことが親の役目。子供が疑問に思うことには全て答えたいし、親の都合で子供の希望を壊したくない」と。
そういえば、小学校低学年の時に漫画家になりたかったのだが、漫画を描くのに必要な道具を揃えるために、お店まで車で1時間かかる距離のあるところへ何度も連れて行ってくれたし、憧れの漫画家のサイン会があると伝えたら、会場まで一緒に行ってくれたりした。
私が大きな壁にぶつかった時は、いつも父が私の背中を押してくれて、道筋を作ってくれていた。それも、決して父自身の意見を押し付けるのではなく、そっと私の背中に手を添えてくれながら一緒に歩いてくれていて、私の意思を尊重しながら導いてくれるのである。
父がいなければ、大きく負の方向に人生が変わっていたような気がしてならない。
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私にも家族ができ、父と関わる時間が減ってしまったが、いつも実家へ帰る度に「おー、おかえり!」と必ず声をかけてきてくれる。
そして、一番に「最近どうや?」と聞いてきてくれる。そんな父の温かさをこれからも忘れたくないし、父の娘であるということを誇りに思う。
そんな父の愛の大きさを改めて実感できた、父の日。