本気でスポーツに取り組んだのは大学時代がピーク。それも部活ではなく、2年連続で履修した選択授業のバドミントン。理由があって部活には入れなかったけれど、バドミントンは昔からする機会が多くて一番好きなスポーツだった。だからこそ、熱中できたのかもしれない。
バドミントンは好きであっても、他のスポーツや体育の授業は苦手。それなのに、高校まではすべて運動部。文化部は個人的に興味が湧かなかった。それなら帰宅部になればいいものを、なぜ敢えて他のスポーツの部活に入ったのか、自分でもいまだに不思議。
社会人になってからは、ほとんどスポーツをすることはなくなっていた。
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転職して3年目になる現在の会社では、毎年6月に社内のイベントとしてスポーツ大会がある。1年目と2年目はあまり楽しめなかったので、今年もあまり乗り気ではなかった。なぜなら、種目に一番嫌いなドッジボールが含まれているから。
小学生のときから嫌いだったドッジボール。地域の催しや学校でドッジボール大会があるときは、本当に嫌々参加しているという感じだった。
上手くボールを投げられなかったのでいつも内野で、こちらへ飛んでくるボールを避けてばかり。顔に当たったときは痛くて泣いてしまった。怖くなってしまって、バレーボールやバスケットボールなど同じくらいの大きさのボールを使うスポーツまで苦手になってしまった。
そんな思い出のあるドッジボールに、今年も始まるまではずっと元気がなかった私。「やりたくない」「帰りたい」が頭の中をグルグルしていた。「足を痛めたフリをして、全部外野で適当に乗り切ろう」とも考えていた。
でも、同じチームに仲良しの同期の子がいたことや、みんなで練習していて何となく楽しんでいる自分がいたことで気持ちに変化があった。「このチームなら大丈夫かも」と思った。そして、この後、予想を遥かに超える結果が待っていた。
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最初の試合では外野になった。他の外野の子たちと協力しながら、相手チームの内野をボールでどんどん当てて減らした。あっという間にその試合に勝利。
私が何気なく投げているボールに、みんな驚いている様子だった。後で聞いた話では「大人しそうな見た目なのにボールが速くてすごい」「投げている姿がカッコ良かった」ということらしい(笑)。
次の試合では内野になることが決まり、少し気分が下がり始めた。外野は平気だけど、内野は狙われるので怖い。だって、まるで狩りをしているかのように、みんな本気で投球してくるから。上手い人のボールはすごい速さで飛んでくるので、当たったときを想像すると余計に怖くなった。
「やっぱりダメか……」と思っていたけれど、今回は違った。
始まってみると、どんなボールも避けられる。自分から前に出て、向かってきたボールを取ることもできる。スポーツが、特にドッジボールは苦手なはずなのに、自分に何が起きているのかと驚いていた。
外野のときのことも含め、私の中の何かが覚醒したのかもしれない(笑)。
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予想を大きく上回り、私のチームは次々と勝ち進んでいった。「とりあえずビリは回避できそうだね」とチーム内で盛り上がる。チーム数はそんなに多くないのに、連続で試合に出ていたせいかプレー時間がとても長く感じた。
私たちのチームは、トーナメント戦1回目で2位になった。
2回目も勢いが止まらなかった私たち。朝は暗い気持ちだったのに、私はすっかり元気になっていた。あんなに嫌いなドッジボールなのにずっとワクワクしてて、オリンピック並みにドキドキしていた。チーム内の団結力は高まり、活気に満ちていた。
気づいたら私たちのチームは1位になっていた。
終わってからも私たちの興奮は冷めることはなく、みんなでワーワー騒ぎながら喜んでいた。頑張りすぎたせいか、私の手のひらは内出血っぽく紫になって少し腫れていた。痛かったけれど、そんなことはどうでもいいと思えるくらい楽しかった。
ドッジボールでこんな気持ちになるのは初めてだった。