「ナイシュー!」

走る足音や、キュッキュッって鳴る靴音。

相変わらずこんな音を聞くと、試合に出るわけじゃ無いのにドキドキする。
体全体がゾワってする、でもワクワクする感覚。
体育館に入って行く感覚ってこんな感じよねって自分に言いかけながら歩く。

コートの外なのに、思わず目で追ってしまうボール。

「あー、あの子上手いな〜。ディフェンスならどうやって誰をぶつける?」
「相手のチームの子も気になる〜!あ、あの子いい!」

誰がうまくてどんな子がいるのか、プレースタイルから思わず探ってしまうこの感覚。
そうそう、やめられないんだよな。
自分の思考に気がついてふっと笑ってしまう。

私はスポーツ、特にバスケが好きだ。
思わずプレーしたくなってしまうくらい。
(体は絶対ついていかない事は分かっているのに笑)
今日はその事について書いてみたい。

◎          ◎ 

私がバスケに出会ったのは、小学3年生の秋ぐらいの時。
ふと放課後に体育館を覗いた事がきっかけだった。

学童に通っていた友達と、校庭で遊んでいたらタイマーのブザーの音とホイッスルの音が聞こえた。
思わず校庭の端っこに建ってる体育館の小窓から覗いたら、そこでは上級生がバスケの練習をしているところだった。

その時の先輩たちが一生懸命プレーしている姿はとても輝いていた。
思わず出た一言は

「かっこいい…!私もあれやりたい!こうなりたい!」

それまで水泳はやっていたけど、それとは格段に違うドキドキ感がそこにはあった。
その後も純粋に見ているのが楽しくて、ずっと練習を眺めていた。
この時、初めてバスケに「恋した」と言っても過言ではない。

◎          ◎ 

家に帰ると家族に「バスケする!」と宣言して、その日から毎日がワクワクしていた。
4年生になるのが待ち遠しくて、うずうずしていたのを覚えている。

4年生になると当時はミニバスケットボールクラブという名前で、小学校に所属する形のチームでプレーを始めた。
小学生にしてはハードで、ほとんど毎日練習の日々。

後で知ったのだが、私が住んでいた地域はバスケが盛んでチーム数も多かった。
もちろん小学校同士の試合も盛んで、毎週末試合が行われる。遠征もあるから家族総出で出かけることも少なくない。
それを毎週支えてくれた両親には本当に感謝である。

◎          ◎ 

私はバスケから多くのことを学んだ。

挨拶、先輩との関係づくり、凹んだメンタルから切り替える方法、人の特性を把握すること、相手の性格を見て対処することなどなど挙げればキリがない。
当時はまだまだスパルタな教育もあって先生にもガンガン怒られていたけど、それでも好きなこと、楽しいことはたくさんあった(反骨精神が強すぎたのもあるかもしれないけど…笑)。

特に好きなのは純粋にパスがバチッと決まる瞬間の気持ちよさである。
何も言わなくても、同じ思いがチームメートと共有できている。走っている先に、相手が望んでいるものが提供できる。

言葉がなくても目線でわかる。こんな感覚を味わえた時は、自然と笑顔になってしまう。
そう考えると、仕事でも同じようなことがあると楽しくなってしまうのは、そこに由来しているのかもしれない。

◎          ◎ 

私にとってバスケが欠かせないものになっていたもう一つの理由があった。
学校の友達とうまくいかない私が、唯一ストレスを昇華できる場でもあったからだ。
友達とはうまくいかないと書いているけどそんなにかわいいものではなくて、母が学校に呼ばれるくらい当時の私は反抗期真っ只中。

女の子同士の付き合いにうまく馴染めなくて、俗に言うスカした感じで過ごす5年生から卒業までの2年間であった。
ちなみに家に帰ればそれはそれで、何を言われても「別に?」「それ私になんか関係ある?」と母に答える始末。

学校のクラスメートにも家族にも、牙剥き出しのトゲトゲ状態であった。
学校は楽しくなかったけど、正直バスケのために毎日学校に行っていたと言っても過言では無い

(お母さん、あの時はたくさん心配をかけてしまってごめんなさい…笑)

そんなこんなで私の辛い時期を支えてくれたバスケとは、高校1年生の夏まで連れ添った。
最後は高校の先生と合わなかったから、部活は辞めて別のスポーツを始めたけど、それでもバスケに出会ったことで私のコアは間違いなく変わったし、私を形成している大事な一部である。

◎          ◎ 

唯一心残りなのは、6歳離れている妹と同じコートに立つ事が出来なかったこと。
年齢的にも離れていたから同じ学校に通うこともなかったけど、それでも一度は一緒に試合に出てみたかったなぁーと思う。
あのバチッと決まる感覚は妹となら「絶対たくさんある!」と話していても思ってしまうのだ。

ちなみに彼女がバスケを始めたきっかけは、私。

姉妹で同じスポーツをする家族にはあるあるだけど、それでも嬉しい。
彼女は大学になるまでバスケを続けていて、結局私よりも長くバスケを続けた。
それは予想外だったけど。

こんなに好きなスポーツに出会えたのは、運が良かったのかもしれない。
ちなみに私はスポーツができなくてそこまで苦労したわけではない人間だったから、スポーツがうまくできない人の気持ちを完全には理解はできていないのかもしれない。

でも、スポーツと距離を置いている人を見ていて、うまくできるかどうかじゃなくて、
「ビビッとくる」とか、「恋に落ちる」みたいな感覚でスポーツを好きになってもいいのでは?と思うこともある。

誰かと比べるのではなくて、心のままに好きになる。
幼い時の私みたいにそんなことがあってもいいと思うのだ。